薬剤師国家試験 第105回 問276-277 過去問解説

 問 題     

47歳男性。1年前に潰瘍性大腸炎と診断され、メサラジンで治療を受けていた。しかし、コントロール不良のため、アザチオプリンが投与されることになった。

薬剤師が処方監査の際、検査値を確認したところ、あるウイルスの既感染者であることに気付き、ウイルスの再活性化に注意しながらアザチオプリンを投与するように医師に提案した。

検査値:ALT 13IU/L、AST 20IU/L、HCV抗体 (-)、HBs抗原 (-)、HBs抗体(-)、HBc抗体 (+)、eGFR 39mL/min/1.73m2

問276

検査値から判断して、この患者において、再活性化に注意すべきウイルスはどれか。1つ選べ。

  1. サイトメガロウイルス
  2. 単純ヘルペスウイルス
  3. B型肝炎ウイルス
  4. C型肝炎ウイルス
  5. ヒト免疫不全ウイルス

問277

アザチオプリンで治療を継続していたところ、9ヶ月後にウイルスの再活性化が確認され、患者の腎機能を考慮して、核酸アナログであるテノホビルアラフェナミドフマル酸塩に変更されることになった。

テノホビルアラフェナミドはテノホビルの経口吸収性を改善したプロドラッグであり、同様のプロドラッグとしてテノホビルジソプロキシルが臨床で先行使用されている。

いずれのプロドラッグも血漿中や標的細胞中で加水分解されてテノホビルとなり、さらに細胞内でリン酸化されて活性代謝物のテノホビル二リン酸となり、抗ウイルス作用を発現する。

また、テノホビルアラフェナミドの( ア )は、テノホビルジソプロキシルに比べて( イ )。その結果、テノホビルアラフェナミドを投与すると、標的細胞内において、テノホビル二リン酸がより高い濃度で産生される。

( ア )及び( イ )に適する語句の組合せとして最も適切なのかどれか。1つ選べ。

  •     ア           イ
  1. 消化管からの吸収速度     遅い
  2. 血漿中での加水分解速度    遅い
  3. 標的細胞中での加水分解速度  遅い
  4. 腎クリアランス        大きい
  5. バイオアベイラビリティ    小さい

 

 

 

 

 

正解.
問276:3
問277:2

 解 説     

問276

HBc 抗体(+) なので、B 型肝炎ウイルスに感染したことがあると考えられます。

まず、HBc 「抗原」は、B 型肝炎ウイルス構成タンパク質の一つです。外殻内部のタンパク質なので、現在の所、検出方法は研究中です。この抗原に対する抗体が HBc 抗体 です。

代表的な肝炎マーカーは HBs,HBe が知られています。そして、このHBs,HBe 抗体が陰性であっても、HBc 抗体が陽性の場合、B 型肝炎ウイルスに感染したことがあるとわかってきました。そのため、免疫抑制剤などを使用する際には、検査が推奨されています。

従って、正解は 3 です。

参考)病態・薬物治療学まとめ 代表的な肝機能検査

問277

テノホビル ジソプロキシルもテノホビルのプロドラッグです。テノホビルアラフェナミドは、血漿中においてより安定です。そのため、活性リン酸化代謝物であるテノホビル二リン酸を、標的細胞内により高い濃度で送達することが可能です。

以上より、正解は 2 です。

コメント