薬剤師国家試験 第105回 問180 過去問解説

 問 題     

図は薬物Aの水和物について昇温過程で熱重量測定(TG)及び示差走査熱量測定(DSC)を行った結果である。薬物Aに関する記述のうち、最も適切なのはどれか。1つ選べ。ただし、薬物Aには水和物、無水物ともに結晶多形は存在しない。

  1. 温度アでみられるDSC曲線の吸熱ピークは、薬物Aの水和物からの結晶水の脱離に基づいている。
  2. 温度アの付近において、薬物Aは融解する。
  3. 温度イの付近において、薬物Aの水和物からの結晶水の脱離が起きる。
  4. 温度イの付近において、薬物Aは結晶化する。
  5. 温度ウを超えて観察される質量変化は、薬物Aの気化に基づいている。

 

 

 

 

 

正解.1

 解 説     

熱重量測定(TG)は、加熱していって質量変化を測定します。
示差走査熱量計(DSC)は、基準物質と一緒に加熱し、温度差を測定します。

選択肢 1,2 ですが
TG も減少しているため、A から何かが脱離していることを示します。水和物で加熱していったので、結晶水の脱離で符号します。融解であれば、だらだらと質量変化(減少)が続くはずです。よって、選択肢 1 は妥当です。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3,4 ですが
温度イにおいて、TG 曲線は変化ありません。従って、結晶水の脱離ではありません。そして、もしも「結晶化」ならば、もともと安定な結晶ではなかったということであり、より安定になるのであれば、DSC 曲線が「発熱」側に動くはずです。よって、選択肢 3,4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
気化であれば、吸熱するはずです。発熱しながら質量が減っていっているため、発熱を伴う熱分解と考えられます。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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