薬剤師国家試験 第105回 問119-121 過去問解説

 問 題     

健康な成人における糖質の消化・吸収過程について、消化管における糖質の消化のプロセス(図1)、小腸粘膜上皮細胞におけるグルコースの輸送過程(図2)及び糖尿病治療薬アカルボースの構造式(図3)を示した。以下の問いに答えよ。

問119

消化管における糖質の消化・吸収に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 酵素Aは膵臓ランゲルハンス島B細胞で合成・分泌される。
  2. 酵素Bは小腸粘膜上皮細胞の管腔側の膜に存在する。
  3. ラクトースは、グルコースとガラクトースがα1 → 4結合で結合している。
  4. マルトースやラクトースは小腸で直接吸収されない。
  5. アカルボースは、酵素Bと酵素Cの活性を阻害する。

問120

小腸粘膜上皮細胞における糖の輸送過程に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. ガラクトースは、単純拡散により細胞膜を通過して細胞内に取り込まれる。
  2. 輸送体Dは、細胞内外のNaの濃度勾配を利用して、グルコースを細胞内に取り込む。
  3. 輸送体Dは、マルトースの輸送体としても働く。
  4. 輸送体Eは、ATPの加水分解により得られたエネルギーを利用して、グルコースを毛細血管側に輸送する。
  5. 輸送体Fは、ATPの加水分解により得られたエネルギーを利用して、K(イオン①)を細胞内に、Na(イオン②)を細胞外に輸送する。

問121

α-グルコシダーゼ阻害薬であるアカルボースに関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。

  1. マルトース型の部分構造が含まれる。
  2. 破線で囲んだ部分の結合様式はβ1 → 4結合である。
  3. 水に溶けやすい。
  4. ヘミアセタール構造をもつため、フェーリング試液による沈殿反応を示す。
  5. p-ベンゾキノン試液による呈色反応を示す。

 

 

 

 

 

正解.
問119:2, 4
問120:2, 5
問121:2

 解 説     

問119

選択肢 1 ですが
酵素 A はアミラーゼです。消化酵素です。ランゲルハンス島は内分泌腺です。インスリンなどのホルモンを合成・分泌します。アミラーゼは合成・分泌していません。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当な記述です。
ちなみに、酵素 B はマルターゼです。

選択肢 3 ですが
ラクトースは、β – 1,4 結合です。「α」ではありません。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当な記述です。

選択肢 5 ですが
アカルボースは、二糖類分解酵素阻害薬です。また、アミラーゼも阻害します。ラクターゼの阻害は見られません。よって、酵素「A と B」の活性を阻害です。「B と C」ではありません。よって、選択肢 5 は誤りです。

問119 の正解は 2,4 です。

問120

選択肢 1 ですが
ガラクトースは SGLT1 により輸送されます。(97-121) 単純拡散ではありません。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当な記述です。
刷子膜側のグルコース輸送に関するトランスポーターは、先程のガラクトース輸送と同様に SGLT1 です。SGLT 1 は、Na+ の濃度勾配を利用する、二次性能動輸送によりグルコース等を取り込みます。

選択肢 3 ですが
マルトースはグルコースに分解されて輸送されます。SGLT1 が マルトースの輸送体として働くという記述は妥当ではないと考えられます。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
基底膜側のグルコース輸送に関する代表的トランスポーターは、 GLUT 2 です。「促進拡散」であることがポイントです。従って「ATP の加水分解により得られたエネルギーを利用して」という記述は不適切です。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当な記述です。
Na+,K+ – ATPase についての記述です。

以上より、問 120 の正解は 2,5 です。

問121

選択肢 1,2 ですが
問題文の構造における右半分がマルトース型の部分構造です。破線部は α-1,4 結合です。β-1,4 結合ではありません。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当な記述です。
OH 基が多いことから判断するとよいのではないでしょうか。

選択肢 4 は妥当な記述です。
右端部分です。エーテル結合(C-O)と、CーOH を両方有する C の部分が、ヘミアセタール構造です。

選択肢 5 は妥当な記述です。
液は赤褐色を示します。

以上より、問 121 の正解は 2 です。

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