薬剤師国家試験 第104回 問288-289 過去問解説

 問 題     

15歳女性。下痢、腹痛が続くため2ヶ月前に病院を受診し、検査した結果、潰瘍性大腸炎と診断された。現在は以下の処方で治療されている。なお、母親はB型肝炎のキャリアである。

問288

この患者の病態の説明として正しいのはどれか。1つ選べ。

  1. 組織生検では、小腸にも異常が認められる。
  2. 便培養検査で原因菌が特定される。
  3. 体重が増加する。
  4. 血液検査では、炎症反応は陰性である。
  5. 症状は再燃と寛解を繰り返す。

問289

その後、症状が増悪したため、入院してインフリキシマブ(遺伝子組換え)点滴静注用を1回投与量として体重1kg当たり5mg投与することになり、予め治療チームで話合いをすることになった。薬剤師が他職種に提供する情報として、適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. 治療中はインフルエンザワクチンの接種を避けること。
  2. 治療中は麻疹ワクチンの接種を避けること。
  3. 胸部レントゲン検査を行い結核感染の有無を確認すること。
  4. 間質性腎炎の検査を定期的に実施すること。
  5. 肝機能に異常がなければ、B型肝炎ウイルス検査は不要であること。

 

 

 

 

 

正解.
問288:5
問289:2, 3

 解 説     

問288

潰瘍性大腸炎は、炎症性腸疾患の一種です。類似疾患としてクローン病があげられます。違いはクローン病は消化管全体に炎症がおきます。大腸炎はその名の通り、大腸における炎症です。

選択肢 1 ですが
潰瘍性大腸炎なので、小腸には異常が見られないと判断してよいと考えられます。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
特に原因菌があるわけではありません。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
潰瘍性大腸炎では、体重の大きな変化は特徴的症状ではありません。ちなみにクローン病は体重「減少」が良く見られます。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
炎症反応陽性です。よって、選択肢 4 は誤りです。

以上より、問288 の正解は 5 です。

問289

インフリキシマブの投与に伴い感染等に注意が必要です。結核、敗血症等に特に注意が必要な薬剤であることを共有することが適切と考えられます。ちなみに、投与に先立ち結核感染等を確認しますが、結核既感染者であった場合は、抗結核薬を投与した上での本剤投与となります。また、生ワクチン摂取をさけます。さらに、B 型肝炎ウイルスの再活性化が知られており、注意が必要です。以上をふまえ、各選択肢を検討します。

選択肢 1 ですが
インフルエンザワクチンは、呼吸器感染症予防のため、可能な限り摂取します。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンの一種です。主成分はヘマグルチニンです。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2,3 は妥当な記述です。

選択肢 4 ですが
紛らわしいのですが間質性「肺」炎です。「腎」炎ではありません。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
B 型肝炎ウイルス検査は必要です。

以上より、問289 の正解は 2,3 です。

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