薬剤師国家試験 第104回 問230-231 過去問解説

 問 題     

28歳女性。8月10日の夜間に下痢、発熱、腹痛を訴えて救急外来を受診した。医師が問診したところ、同日の昼間に料理教室で卵を用いた洋生菓子を作り、それを食べたとのことであった。一緒に料理教室に行った友人5人も同じ物を食べ、同じ症状を訴えているという。

問診の結果から、医師は細菌性食中毒を疑い抗菌薬を投与することにした。

問230

患者の受診当日、医師は、処方可能な経口抗菌剤について薬剤師にアドバイスを求めた。薬剤師が提案すべき薬剤として最も適切なのはどれか。1つ選べ。

  1. バンコマイシン塩酸塩散
  2. クラリスロマイシン錠
  3. イトラコナゾール錠
  4. レボフロキサシン錠
  5. イベルメクチン錠

問231

後日、洋生菓子の原材料である液卵(卵黄)と当該患者の下痢便から共通して医師が予想したものと同じ細菌が分離・同定された。細菌性毒素は検出されなかった。この患者の食中毒の原因菌として最も可能性が高いのはどれか。1つ選べ。

  1. ボツリヌス菌
  2. カンピロバクター・ジェジュニ
  3. サルモネラ属菌
  4. セレウス菌
  5. 黄色ブドウ球菌

 

 

 

 

 

正解.
問230:4
問231:3

 解 説     

問230

卵、生菓子での食中毒なので、サルモネラ中毒が疑われます。すると抗菌薬としてはニューキノロンが一般的に用いられると考えられます。

また、これを知識として知らなかった場合も、選択肢 1 ですが
バンコマイシンは グリコペプチド系です。適応がありません。そもそも耐性菌への「切り札」的薬です。原因菌もわからない段階で、いきなり使うとは考えにくいのではないでしょうか。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
クラリスロマイシンは、マクロライド系の抗菌薬です。マクロライド系も広い抗菌スペクトラムを有しますが、エンピリック治療(病原微生物を同定する前の治療)においてマクロライドを用いるのは、カンピロバクターを強く疑うといった場合です。カンピロバクターを疑うなら、鳥肉です。生卵ではありません。選択肢 2 は適切とはいえないと考えられます。

選択肢 3 ですが
イトラコナゾールはアゾール系の抗真菌薬です。不適切です。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当な記述です。
レボフロキサシンはニューキノロン系抗菌薬です。起因菌が確定しておらず、エンピリック治療となる点を考えても、幅広い抗菌スペクトラムを有し、適切と考えられます。

選択肢 5 ですが
イベルメクチンは、マクロライド類に属する経口駆虫薬です。不適切です。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、問230 の正解は 4 です。

問231

細菌性毒素がないことから、黄色ブドウ球菌ではありません。そして、生卵と、下痢から共通して細菌が分離されていることから、サルモネラ属菌が強く疑われます。

以上より、問231 の正解は 3 です。

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