問 題
60歳男性。喘息のため吸入ステロイド薬と共にテオフィリンを服用している。今回、右腰のまわりに痛みを伴う水疱が出現したので皮膚科を受診したところ、帯状疱疹と診断され、以下の処方箋を持って薬局を訪れた。
面談により、この患者には、過去に口唇ヘルペスでバラシクロビル錠の服用の経験があることが分かった。また、営業職であるため忙しく、1日5回の服用を守ることは困難であると訴えた。そこで、皮膚科の医師に疑義照会したところ、以下の処方に変更となった。
なお、この患者のクレアチニンクリアランスは50mL/minであった。
問212
この患者に処方されたバラシクロビル錠に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。
- 口唇ヘルペスと帯状疱疹に対する用法・用量・投与日数は異なる。
- テオフィリンと併用しても、テオフィリンの中毒症状が現れることはない。
- アシクロビルに比べて副作用が現れにくい。
- 腎機能が低下した時には、投与間隔の延長あるいは減量を伴った投与間隔の延長の措置を行う。
- 7日間服用することで痛みは消失するが水泡は消失することはない。
問213
バラシクロビルに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- アシクロビルの脂溶性を増大させることを意図して創出されたプロドラッグである。
- アシクロビルとL-バリンがエステル結合を介して連結した構造をもつ。
- 生体内に存在する酵素の作用により、波線部aにおいて結合が切断される。
- 生体内でbに示す酸素原子がリン酸化されることによって薬理活性を示す。
- 小腸のペプチドトランスポーターを介して吸収される。
正解．
問212：1, 4
問213：2, 5
解 説
問212
選択肢 1 は妥当な記述です。
バラシクロビル（バルトレックス）は、単純疱疹の場合 1回 500mg を 1 日 2 回投与です。単純疱疹は大きく口唇ヘルペスと性器ヘルペスに分類されます。
選択肢 2 ですが
テオフィリンとアシクロビルの併用で、機序不明ながらテオフィリンの血中濃度上昇が知られています。バラシクロビルはアシクロビルのプロドラックです。そのため、代謝物との併用効果により、テオフィリンの中毒症状が現れる可能性があります。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
バイオアベイラビリティが高くなっているため、少なくとも「現れにくい」という記述は不適切と考えられます。よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当な記述です。
選択肢 5 ですが
水泡消失までの時間短縮も期待できます。「水泡は消失することはない」という記述は不適切と考えられます。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、問212 の正解は 1,4 です。
問213
選択肢 1 ですが
アシクロビル＋バリンのエステル結合がバラシクロビルです。意図は経口吸収性改善です。「脂溶性増大」が意図ではありません。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当な記述です。
選択肢 3,4 ですが
小腸ペプチドトランスポーターの一種である PEPT1 により吸収された後、肝臓で加水分解されて薬効発揮です。エステルの加水分解なので、切断されるのはCOO の部分です。 波線部 a ではありません。また、b の酸素原子がリン酸化されることによって活性化されるわけでもありません。よって、選択肢 3,4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当な記述です。
以上より、問213 の正解は 2,5 です。
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