薬剤師国家試験 第104回 問103 過去問解説

 問 題     

d-カンフルとその確認試験に用いられる2,4-ジニトロフェニルヒドラジンとの反応に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 脱水縮合反応である。
  2. 反応の進行に伴って窒素が発生する。
  3. 生成する有機化合物の一般名はオキシムである。
  4. 生成する有機化合物はオレフィン構造を持つ。
  5. 生成する有機化合物はベンゼン環を含む共役系を持ち、橙赤色を示す。

 

 

 

 

 

正解.1, 5

 解 説     

d-カンフルはケトンなので、このカルボニル基が反応点になりそうです。一方の2,4-ジニトロフェニルヒドラジンには非共有電子対を持つ-NH2基があるので、ここが反応点と考えることができます。

この反応は、アルデヒドやケトンに第一級アミンを反応させると、アミンの付加反応に続く脱水反応が起こり、結果、イミンが生成するという反応です。

この反応の反応機構は以下のとおりです。


以上を踏まえて選択肢を見ていきます。

(1)は上記の反応機構を見てもわかる通り、「>C=O」と「-NH2」が反応して「>C=N-」になるので、脱水縮合反応です。よって、これは正しい記述です。

(2)で、上記の反応機構の通り、これは窒素を生じる反応ではないので、(2)は誤りです。

(3)に関して、第一級アミンの中でも、ヒドロキシルアミンやヒドラジンなど特徴的な構造を持ったアミンを使ってこの反応を行うと、その生成物もオキシムやヒドラゾンなど少し変わったものになります。

今回はヒドラジンを用いて反応させているので、生成物はヒドラゾンになります。よって、(3)に書かれている「オキシム」は誤りです。

(4)について、オレフィン構造とは炭素同士の二重結合「C=C」です。この反応でできるのはCとNの二重結合「C=N」なので、(4)も誤りです。

(5)で、この問題の生成物は以下のようになります。

上図青点線の枠内に注目すると、一つ置きに二重結合または窒素の非共有電子対があるので、ベンゼン環を含む共役系を持つといえます。

また、アルデヒドやケトンの確認試験の方法の一つが、2,4-ジニトロフェニルヒドラジンと反応させることにより生成したヒドラゾンの黄~橙色の沈殿を確認するというものです。今回の問題はまさにこれです。

(5)にあるように「d-カンフルなら橙赤色」とまでは覚えていないかもしれませんが、一般論の黄~橙色から大きく外れていないため、これは正しいと判断して差し支えありません。もしこの選択肢が誤った選択肢なら、もっと随分違った色を出題するはずです。

よって、(5)は正しい記述です。


参考)有機化学 アミンの付加反応・Grinard試薬の反応

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