薬剤師国家試験 第103回 問304-305 過去問解説

 問 題     

産婦人科の医師から、医薬品情報室に「帝王切開前の皮膚消毒に用いる消毒薬として、クロルヘキシジンとポビドンヨードのどちらが手術部位感染を予防するのに良いか。」との問い合わせがあった。

情報収集の結果、クロルヘキシジン(2%クロルヘキシジングルコン酸塩+イソプロピルアルコール)群と、ポビドンヨード(8.3%ポビドンヨード+イソプロピルアルコール)群を比較した論文を見出し、表に基づいて説明した。

問304

薬剤師の説明として、適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. 主要評価項目は、手術部位感染の発症率と平均入院期間であった。
  2. クロルヘキシジン群では、ポビドンヨード群と比べて、手術部位感染のリスクが45%減少することが示されている。
  3. クロルヘキシジン群では、ポビドンヨード群と比べて、深部の手術部位感染のリスクは統計学的に有意に小さい。
  4. クロルヘキシジン群、ポビドンヨード群ともに、入院期間の中央値は4日間であった。
  5. 再入院までの期間は、クロルヘキシジン群、ポビドンヨード群においてそれぞれ19日間、25日間であった。

問305

この研究に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. この研究は介入研究である。
  2. Primary outcomeとは真のアウトカムのことである。
  3. Randomized trialでは交絡因子の制御が困難である。
  4. ITT解析により、当初の患者背景因子の同等性が保持されていると考えられる。
  5. 生存時間分析を行っている。

 

 

 

 

 

正解.
問304:2, 4
問305:1, 4

 解 説     

問304

選択肢 1 ですが
「主要評価項目」とは「Primary outcome」のことです。ここには「Surgical-site infection」とあります。これは手術部位感染 のことです。平均入院期間は主要評価項目ではありません。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は、正しい記述です。
Relative Risk つまり相対リスクが 0.55 と読み取れます。これは、リスクが 0.45 つまり 45% 減少しているということです。

選択肢 3 ですが
深部の感染は「Deep incisional」の行に注目します。すると、95%CI(95%信頼区間)が0.43(0.17-1.11)とあります。1をまたいでいるので、有意差はなしです。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は、正しい記述です。
「入院期間の中央値」とは「Median length of hospital stay」です。

選択肢 5 ですが
「再入院」は「Hospital readmission」です。この項目は no.(%)とあります。つまり、クロロヘキシジン群であれば N=573 に対して 19 人が再入院しその割合は 3.3 % ということです。19日間ではありません。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2,4 です。

問305

選択肢 1 は、正しい記述です。
介入研究とは、疾病と因果関係があると考えられる要因に積極的に介入する研究です。

選択肢 2 ですが
Primary Outcome とは、主要評価項目のことです。これは、臨床試験における目的とする評価項目です。一方、真のアウトカムとは、患者の死亡数の減少といった患者にとって直接的に重要な結果のことです。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
交絡因子が不明な場合の有効な手法が、ランダム化試験です。ランダム化により臨床試験における違い以外が均等であると期待できます。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は、正しい記述です。
ITT 解析とは、臨床試験中に副反応等で当初の割当を変更することがあるのですが、その影響を考慮し、より実用的価値を評価する手法です。

選択肢 5 ですが
生存時間の分析は行われていません。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1,4 です。

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