薬剤師国家試験 第103回 問95 過去問解説

 問 題     

分子の振動、回転、電子遷移に伴う、分子のエネルギー準位間の遷移と電磁波の吸収及び散乱に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 分子の振動、回転、電子遷移のうち、回転に伴って吸収される電磁波の波長が最も長い。
  2. 吸収される電磁波の波長と、遷移するエネルギー準位間のエネルギー差には、正の比例関係がある。
  3. ラマン散乱が観測されるためには、分子の振動によって双極子モーメントが変化する必要がある。
  4. 分子の振動、回転、電子遷移に伴う吸収のうち、吸光度が濃度に比例するのは電子遷移の場合だけである。
  5. 電子遷移に伴う吸収スペクトルが幅広い吸収帯となるのは、分子の振動や回転によるエネルギー変化も反映されるからである。

 

 

 

 

 

正解.1, 5

 解 説     

選択肢 1 は、正しい記述です。
「電子遷移」に伴うエネルギー準位が一番大きく、次が「振動」で、「回転」は、一番小さい準位間です。(これは知識です。)すると回転により吸収される電磁波 というのはエネルギーが最も小さいものとなります。(幅分のエネルギーをちょうど受け取るから。)エネルギーが小さい=波長が長い です。よって、選択肢 1 は正しい記述となります。

選択肢 2 ですが
波長が長いほど、エネルギーは小さくなります。従って、遷移する準位間のエネルギー差も小さくなります。正の比例関係ではありません。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
蛍光を入射すると、入射した光とは「振動数が異なる光」が散乱されることがあります。これはラマン散乱光と呼ばれます。双極子モーメントが変化するわけではありません。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は
振動状態は、具体的には赤外吸収スペクトルとして観測できます。回転状態は具体的にはマイクロ波スペクトルとして観測できます。電子のエネルギー状態は紫外吸収スペクトルとして観測できます。吸光度についてはどれもランバートベールの法則が成り立ちます。従って、濃度に比例します。

選択肢 5 は、正しい記述です。

以上より、正解は 1,5 です。
類題 101-95
参考 物理化学まとめ エネルギーの量子化とボルツマン分布

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