薬剤師国家試験 第102回 問286-287 過去問解説

 問 題     

65歳男性。人間ドックで血中prostate specific antigen(PSA)値の高値(30.3ng/mL)を認めた。

問286

一般にPSAの上昇を認める泌尿器系疾患はどれか。2つ選べ。

  1. セミノーマ
  2. 腎細胞がん
  3. 前立腺肥大症
  4. 前立腺がん
  5. 膀胱がん

問287

その後、生検の結果、腫瘤が悪性と診断されたため内分泌療法が施行され、PSA値は正常上限値以下を推移していた。しかし、6年後の受診で再度PSA値が高値となった。このため抗アンドロゲン薬を試みたが、改善が見られず、内分泌療法抵抗性が確認された。そこで、新たな薬物療法を開始することになった。

本患者に適用することになった薬物はどれか。2つ選べ。

  1. シロドシン
  2. ドセタキセル
  3. コハク酸ソリフェナシン
  4. プレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム
  5. クロルマジノン酢酸エステル

 

 

 

 

 

正解.
問286:3, 4
問287:2, 4

 解 説     

問286

PSAは、分子量 3000 強の単鎖状糖タンパク質です。セリンプロテアーゼの一種であり前立腺から分泌されます。

選択肢 1 ですが
セミノーマとは、精巣腫瘍の一種です。一般に、PSA 上昇は認めません。

選択肢 2 ですが
腎細胞がんでは一般に、PSAの上昇は認めません。

選択肢 3,4 は、正しい選択肢です。

選択肢 5 ですが
膀胱がんでは一般に、PSAの上昇は認めません。

以上より、正解は 3,4 です。

問287

ホルモン療法は高い有効性を示すのですが、治療の長期化に伴う治療抵抗性が見られることが多々あります。これを去勢抵抗性と呼びます。この場合、タキサン系+ステロイドが用いられます。

選択肢 1 ですが
シロドシンは、α1 受容体遮断薬です。前立腺肥大症などに用いられます。

選択肢 2 は、正しい選択肢です。

選択肢 3 ですが
コハク酸ソリフェナシン(ベシケア)は、M3 受容体遮断薬です。過活動膀胱症候群の治療に用いられます。

選択肢 4 は、正しい選択肢です。

選択肢 5 ですが
クロルマジノン酢酸エステルは、アンドロゲン受容体遮断薬です。抗男性ホルモンの一種です。ホルモン療法に用いられます。従って、正解は 2, 4 です。

また、カバジタキセル(ジェブタナ)、エンザルタミド(イクスタンジ。アンドロゲン受容体拮抗薬)、アビラテロン(ザイティガ。CYP17阻害薬)などが、去勢抵抗性前立腺がんに適応を持つ新しい薬として用いられるようになっています。

更に補足として、前立腺がんに伴う転移においては、骨転移の割合が高くなっています。骨転移が見られた場合は、ゾメタ(ゾレドロン酸)、デノスマブ(ランマーク=RANKLモノクローナル抗体)などが用いられます。

さらに、2016年から、放射線治療(ゾーフィゴ)が保険適応になるなど様々な治療の選択肢が増えている領域ですのでできるだけ最新の動向に注目しておくべきであると考えられます。

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