薬剤師国家試験 第102回 問228-229 過去問解説

 問 題     

69歳女性。胃がんの手術後の入院中に、医師、看護師、管理栄養士及び薬剤師で構成されたNST(Nutrition Support Team)による患者カンファレンスが行われた結果、脂肪乳剤輸液(10%、250mL)の投与が開始された。

問228

脂肪乳剤輸液に関する記述のうち、誤っているのはどれか。2つ選べ。

  1. 脂肪乳剤は急速大量投与が必要であるため、1時間以内に全量を投与する。
  2. 血管外に漏出すると皮膚壊死や皮膚潰瘍を起こす可能性がある。
  3. 他の注射剤を混合して投与可能である。
  4. ポリカーボネート製の三方活栓にひび割れを生じさせることがあるので、漏れがないように注意する。
  5. 可塑剤としてDEHP[フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)]を含まない輸液セットを使用する。

問229

脂肪乳剤輸液に用いられる脂質に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 脂肪乳剤中の油脂には必須脂肪酸のリノール酸及びα-リノレン酸が含まれている。
  2. 中鎖脂肪酸は長鎖脂肪酸に比べてエネルギーに変換されにくいので、中鎖脂肪酸を含む油脂は脂肪乳剤としては用いられない。
  3. 脂肪乳剤中の脂質1gあたりのエネルギー量は約9kcalである。
  4. 脂肪乳剤中のトリアシルグリセロールは、リポタンパク質リパーゼによりモノアシルグリセロールと脂肪酸に分解され組織に吸収される。
  5. 脂肪乳剤には乳化剤としてコレステロールが含まれている。

 

 

 

 

 

正解.
問228:1, 3
問229:1, 3

 解 説     

問228

選択肢 1 ですが
脂肪乳剤は、ゆっくり投与します。急速な血中の脂質濃度の上昇やそれに伴う免疫能の低下を避けるためです。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は、正しい記述です。

選択肢 3 は
誤りであると考えられます。添付文書によれば混合を避けるように指示されています。電解質やアミノ酸との混合により経時的に粒子の粗大化、凝集を招くおそれがあるといったことが指摘されています。

選択肢 4,5 は正しい記述です。
選択肢 4 ですが、油性成分による三方活栓のひび割れを引き起こす事例が報告されており、注意が必要です。選択肢 5 は、DEHP の 溶出を避けるためです。

以上より、正解は 1,3 です。

問229

選択肢 1 は、正しい記述です。
必須脂肪酸の補給が脂肪乳剤の重要な意義の1つです。

選択肢 2 ですが
中鎖脂肪酸は、一般的な脂肪に比べエネルギー変換効率が高いとされています。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は、正しい記述です。

選択肢 4 ですが
「遊離脂肪酸」と「グリセロール」に分解されると考えられます。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
乳化剤として含まれるのはレシチンです。コレステロールでは、ありません。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1,3 です。

コメント