問 題
震度7の地震が発生し、多くの住民が家屋を失った。多数の人が狭い避難所や自家用車の中で1日の大部分を過ごしているので、過去の震災での経験から深部静脈血栓症/肺血栓塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)の発症が危惧された。
問216
被災地支援の薬剤師が避難所等を巡回する際に、エコノミークラス症候群予防のために提供する情報として、適切でないのはどれか。1つ選べ。
- 足の腫れや痛みがある時には、すぐに医療機関を受診してください。
- ゆったりとした服装で過ごしてください。
- 1、2ヶ月以内に大きな手術を受けた方はご相談ください。
- 水分の摂取を控えてください。
- 足や足の指をこまめに動かしてください。
問217
肺血栓塞栓症において、下肢静脈で生じた血栓が肺へ到達する経路として、正しいのはどれか。1つ選べ。
- 大腿静脈 → 総腸骨静脈 → 下大静脈 → 右心房 → 右心室 → 肺静脈 → 肺
- 大腿静脈 → 総腸骨静脈 → 下大静脈 → 右心房 → 右心室 → 肺動脈 → 肺
- 総腸骨静脈 → 大腿静脈 → 門脈 → 下大静脈 → 右心房 → 右心室 → 肺動脈 → 肺
- 総腸骨静脈 → 大腿静脈 → 下大静脈 → 左心房 → 左心室 → 肺静脈 → 肺
- 大腿静脈 → 総腸骨静脈 → 下大静脈 → 左心房 → 左心室 → 肺動脈 → 肺
正解.
問216:4
問217:2
解 説
問216
エコノミークラス症候群とは、長時間狭い椅子に座ったままでいる事による深部静脈血栓症のことです。深部静脈血栓症はしばしば無症状です。しかし、歩行等をきっかけに血栓が血流に乗り肺に到達し、肺動脈を塞ぐ塞栓症がおきうる症状です。予防法としては、こまめな水分補給、足の運動、ゆったりとした服装などがあげられます。
以上をふまえ、各選択肢を検討すると
選択肢 1,2,5 は正しい記述です。
選択肢 3 は、正しい記述です。
大きな手術、すなわち、がんの手術などを受けて間もない場合は血管に傷が残っている可能性などがあり、エコノミークラス症候群の高リスク要因があるとして、より注意が必要となります
選択肢 4 ですが
水分はこまめに補給した方がよいです。よって、選択肢 4 は誤りです。
以上より、正解は 4 です。
問217
下肢静脈 というのは全身循環の一部です。「全身→心臓→肺→心臓→全身」と血液は循環しています。
また、全身→心臓 に戻る時の血管は大静脈です。心臓は大きく4つの部分、すなわち右心房、右心室、左心房、左心室 に区分されますが、全身→心臓に戻る時は「右心房」に血液が流れ込みます。
右心房に入った血液は、右心室→肺動脈にのって、肺へ と送られます。「右心房→右心室→肺動脈」に注目して選択肢を検討すれば、正解は 2,3 のどちらかにしぼれます。
選択肢 3 ですが
門脈 とは、消化管→肝臓のルートの血管です。本問では適切ではありません。よって、選択肢 3 は誤りです。
以上より、正解は 2 です。
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