薬剤師国家試験 第102回 問218-219 過去問解説

 問 題     

75歳女性。脳塞で寝たきりとなり、仙骨部に褥瘡を形成したことから、褥瘡対策チームが対応した。なお、本患者には、心機能、肝機能、腎機能及び甲状腺機能の低下や各臓器からの出血はいずれも認められていなかった。

問218

下図は褥瘡の治癒過程(①~④)の模式図である。下記の治癒過程に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1.  ②及び③の創傷部周囲から肉芽部へ線維芽細胞が移動し、増殖する。
  2.  ③における肉芽の増生には、コラーゲンの生合成促進が関わる。
  3. 治癒の過程においては、毛細血管の新生が表皮で起こる。
  4. 主に真皮に存在する細胞が増殖し、④において上皮を再生する。
  5. ケラチンを合成する細胞は、主に皮下組織に存在する。

問219

褥瘡患部は、乾燥した厚い黒色壊死組織を形成し(黒色期)、滲出液はほとんどなかった。褥瘡対策チームにおいて薬剤師が処方薬を提案し、下記の経緯で治癒に至った。A~Cに入る薬剤として最も適切な組合せはどれか。1つ選べ。

( A )が処方され、数日間塗布した後、医師により壊死組織が切除された。その後、黄色壊死組織(黄色期)はわずかになり滲出液を伴う赤色肉芽が見られたため(赤色期)、滲出液の吸収・肉芽形成を目的として、( B )へ処方変更となった。( B )は、ガーゼに薄くのばして、貼付した。

数日後、肉芽が盛り上がり滲出液は減少してきた。湿潤を保持しながら創傷部周囲からの上皮化(白色期)を促進させる目的で( C )を塗布し、治癒へと至った。

 

 

 

 

 

正解.
問218:1, 2
問219:3

 解 説     

問218

褥瘡とは、同じ箇所への持続的圧力による血行不全、壊死等に伴う皮膚症状のことです。

治療は、ある程度以上の深さまで褥瘡が到達している場合には、まず外科的に壊死部分を除去します。この際、感染防止のための処置が必要です。その後治癒促進のために湿潤環境を保ちます。このために、ドレッシング剤と呼ばれるシート状の外用剤を用います。肉芽と呼ばれる毛細血管の塊が全体を覆い収縮していくことで治癒にむかいます。

以上をふまえ、各選択肢を検討すると
選択肢 1,2 は、正しい記述です。

選択肢 3 ですが
毛細血管の新生とは、肉芽形成と読み替えてよいです。表皮でおきるわけではなく、図 ③ に示されるように、創傷部の底面から盛り上がるように肉芽が形成されていきます。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
「肉芽の上に縁から表皮が進展」していって、上皮を再生していきます。真皮に存在する細胞が増殖するわけではありません。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
ケラチン合成は「基底層」で行われます。つまり、表皮の一部です。皮下組織ではありません。よって、選択肢 5 は誤りです。

ちなみに、皮膚は上から、表皮→真皮→皮下組織です。表皮を更に区分した時の一番下の層が基底層と呼ばれます。

以上より、正解は 1,2 です。

問219

アルプロスタジルは、PGE1 製剤です。血流を促進し、肉芽形成、表皮形成を促進します。「上皮化の促進」 とあるので、C が アルプロスタジルアルファデクスとわかります。これで正解は 1 or 3 です。

白糖とポビドンヨード配合軟膏は、滲出液吸収で用いられます。これで正解は 3 とわかります。

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