薬剤師国家試験 第102回 問138 過去問解説

 問 題     

6種類の有機化合物を水に溶解し、生物化学的酸素要求量(BOD)(注1)及び2種類の測定法による化学的酸素要求量(COD)を求めた。下表は、このBODとCODを、理論的酸素要求量(注2)に対する割合(%)として示したものである。

この表から考えられる記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. BODとCODの間には、有機化合物の種類にかかわらず、比例関係が認められる。
  2. 酸性高温過マンガン酸法では、糖質はカルボン酸やアミノ酸に比べ、酸化されにくい。
  3. 2種類のCODの測定法のうち、二クロム酸法の方が有機化合物の種類にかかわらず、強い酸化力を示す。
  4. この実験に用いた植種水中の微生物は、6種類の化合物のうち、酢酸に対して最も高い酸素消費量(gO/g)を示す。
  5. 湖沼から採取した試料水にグリシンが大量に含まれる場合には、酸性高温過マンガン酸法によるCODが、その試料水の酸素消費量を最も良く反映する。

 

 

 

 

 

正解.3, 4

 解 説     

BOD とは、20℃、5 日間で培養した時の酸素要求量 のことです。COD とは、化学的に色々薬品を入れて計算してわかる酸素要求量のことです。方法がいくつかあります。

選択肢 1 ですが
例えば酢酸とプロピオン酸に注目すると、BOD が 減少している一方で、COD は、方法によらず増加しています。明らかに、比例関係は認められません。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
酸性高温過マンガン酸法の列に注目すると、数値が高いのはグルコース、及びラクトースです。つまり糖です。数値が高いということは酸素消費量が多いということなので、酸化されやすいと考えられます。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3,4 は、正しい記述です。
COD の測定法において、ニクロム酸法の酸化力が最も高い ということはぜひ覚えておくとよいです。

選択肢 5 ですが
グリシンに対する酸性高温過マンガン酸法の数値は 3 です。この方法では十分に酸化させることができていないと考えられます。従って、グリシンを大量に含む場合、酸性高温過マンガン酸法で評価すると実際に必要な酸素消費量よりも少なく見積もってしまうと考えられます。

ちなみに、グリシンはアミノ酸です。N を含みます。酸性高温過マンガン酸法はN 化合物を酸化しにくい、という特徴があります。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3,4 です。

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