薬剤師国家試験 第102回 問119 過去問解説

 問 題     

移植片拒絶反応について調べるため、2種類の近交系のマウス(A/AとB/B)を用いて、下記のような交配を行った。これらのマウスを用いて皮膚の移植実験を行った。以下に実験結果を示す。なお、A/A、A/B及びB/Bは組織適合抗原の遺伝子型を表している。

[交配手順]

  1. A/Aの親マウスとB/Bの親マウス間で交配し、雑種第一代(F1)マウスを得た。
  2. F1マウス同士を交配して雑種第二代(F2)マウスを得た。

[実験結果]

  1. A/Aの親マウス同士の移植、B/Bの親マウス同士の移植は常に成立した。
  2. A/Aの親マウスとB/Bの親マウスの間の移植は常に失敗した。

以上の移植実験結果に基づき、移植が常に成立すると予想されるのはどれか。2つ選べ。

  1. A/Aの親マウスから、F1マウスへの移植
  2. F1マウスから、A/Aの親マウスへの移植
  3. A/Aの親マウスから、F2マウスへの移植
  4. F1マウスから、B/Bの親マウスへの移植
  5. F2マウスから、F1マウスへの移植

 

 

 

 

 

正解.1, 5

 解 説     

移植片拒絶なので「自分でないものが来ると拒絶」です。

選択肢 1 は、正しい記述です。
A/Aの親マウスからの移植なので、この皮膚はAです。(より正確に表現するなら、皮膚細胞の表面に出ている組織適合抗原がAです。)F1 にとっての「自分」とは、自分がA/Bなのでやってくるのは、AでもBでもOKです。従って、移植は成功します。

ちなみに、移植される側が F1 であれば大丈夫なので、選択肢 5 も正しい記述となります。

選択肢 2 ですが
F1 から、A/Aに移植してしまうと、皮膚細胞には、A を抗原掲示しているものと、B を抗原掲示しているものが混在します。すると「自分ではない B」がやってくることになるので拒絶がおきます。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
F2 の中には、B/Bがいます。A/Aから、B/Bだとだめでした。これは実験結果②より判断できます。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
F1 から B/Bに移植してしまうと、皮膚細胞には、A を抗原掲示しているものと B を抗原掲示しているものが混在します。B/Bへ移植すると「自分ではないA」がやってくることになってしまうので拒絶がおきます。よって、選択肢 4 は誤りです。

以上より、正解は 1,5 です。

コメント