薬剤師国家試験 第101回 問208-209 過去問解説

 問 題     

72歳男性。いつもは21時頃に床に入り、夜間に1~2回トイレに起きることはあるが、眠れていた。1週間前より寝つきが悪くなり、内科を受診した。以下の処方箋が出され、保険薬局に持参した。併用薬はなく、肝機能、腎機能に異常はない。この薬剤を服用するのは初めてである。

問208

今回の処方に関する服薬指導として適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. 眠れるようになれば、いつ服用をやめても構いません。
  2. 就寝前に飲酒しても構いません。
  3. 眠れなければ、服用量を増やしても構いません。
  4. グレープフルーツジュースを飲むのは避けてください。
  5. カフェイン(コーヒー、紅茶など)の摂取は、夕方以降は避けてください。

問209

ゾルピデム酒石酸塩に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 窒素原子アはsp3混成軌道をもつ。
  2. 破線で囲んだ環は芳香族性をもつ。
  3. 窒素原子イは、3つの窒素原子のうち最も塩基性が高い。
  4. 酒石酸の立体異性体は、図に示したものを含めて4つある。
  5. この酒石酸は(2R,3R)の立体配置を有する。

 

 

 

 

 

正解.
問208:解なし
問209:2, 5

 解 説     

問208

解なしのため、解説なし。

問209

選択肢 1 ですが
窒素原子アは「二重結合・単結合・非共有電子対」がそれぞれ 120°の間隔で開いているため、これは sp2 混成軌道を持ちます。参考)有機化学 2-3 1)芳香族化合物・芳香族性

選択肢 2 は正しい記述です。
破線で囲んだ環は Hückel 則を満たすので、芳香族性を示します。Hückel則とは、① π電子系に含まれる電子の数が 4n+2(今回はn = 2)個である、② 環全体が平面構造をとっている、③ 環を構成する全原子が sp2 混成軌道をとっている の全てを満たせば、その環は芳香族性を持つ、という法則です。

選択肢 3 ですが
これは結論からいうと、最も塩基性が高いのは、窒素原子アです。まず、窒素原子イに関しては、この窒素のもつ非共有電子対が芳香族性に寄与しているため、塩基としての役割は示せません。また、破線の外にある窒素は、隣にカルボニル基があるため、共鳴によって電子が非局在化します。よって、この窒素がもつ非共有電子対も電子密度が低く、塩基としてはあまり役に立ちません。

一方、窒素原子アのもつ非共有電子対は、非局在化することなく sp2 混成軌道の一つに収まっているため、これは塩基の性質を示します。参考)有機化学 3-8 4)含窒素化合物の塩基性度

選択肢 4 ですが
酒石酸は(2R, 3S)と(2S, 3R)が全く同一の構造となるメソ化合物なので、立体異性体は、(2R, 3R)、(2S, 3S)、メソ体の3つとなります。参考)有機化学 1-2 4)

選択肢 5 は、正しい記述です。

R体かS体かを判断するには、以下の手順に従ってください。
① 不斉炭素に結合した 4 つの原子(原子団)に ① 番 ~ ④ 番までの優先順位をつけます。
② 優先順位の最も低い ④ 番の原子(原子団)を紙面奥側になるように構造式を回転させます。
③ 残った優先順位 ① ~ ③ 番の原子(原子団)を ① → ② → ③ になるように見た時、それが時計回 り(右回り)なら R 体、反時計回り(左回り)なら S 体です。

この酒石酸でこれを当てはめると、左上の炭素は R 体、右下の炭素も R 体であることがわかります。よって、この酒石酸は(2R, 3R)の立体配置を有します。参考)有機化学 1-2 5)絶対配置の表示法

以上より、正解は 2,5 です。

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