薬剤師国家試験 第101回 問186 過去問解説

 問 題     

36歳男性。既往歴に特記すべきことなし。体のだるさとともに、突然、上眼瞼と下肢に浮腫が出現した。血圧は140/85mmHgで、血液検査・尿検査を行ったところ、結果は以下のとおりであった。

血液検査:白血球 5,800/μL、Hb 14.2g/dL、血小板数 25×104/μL、AST 32IU/L、ALT 38IU/L、血中尿素窒素(BUN) 23mg/dL血清クレアチニン 1.2mg/dL、クレアチニンクリアランス 80mL/min、Na 138mEq/L、K 4.5mEq/L、Cl 102mEq/L、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C) 268mg/dL、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-C) 39mg/dL、トリグリセリド 190mg/dL、血清総タンパク 5.6g/dL、血清アルブミン 2.6g/dL、空腹時血糖 98mg/dL、HbA1c 5.6%

尿検査:尿潜血 (-)、尿タンパク (4+) 3.8g/day、尿比重 1.018

精査の結果、ステロイドのパルス療法が開始された。

この患者の推定される病態として正しいのはどれか。1つ選べ。

  1. 痛風腎
  2. 糖尿病
  3. ネフローゼ症候群
  4. 急性肝炎
  5. 多発性硬化症

 

 

 

 

 

正解.3

 解 説     

まぶたは、とても薄い皮膚であり、また、足は重力の影響で共に、むくみが出やすい場所です。検査値で特徴的な点を列挙すると、血圧、BUN、血清クレアチニンが 少し高め。クレアチニンクリアランスが 少し低め。コレステロール、中性脂肪が 高め。アルブミンが低め。血糖、通常範囲。尿蛋白+ などがあります。

検査値と、症状を関連づけて評価すると「タンパク質が体外に排出されてアルブミン低め。→浸透圧(=水をキープする力)が下がって血管外へ水分が漏出して、むくみとして症状が出ている」 という点が特徴的です。以上をふまえ、各選択肢を検討します。

選択肢 1 ですが
痛風腎とは、尿酸結晶の腎臓沈着による慢性的腎炎です。関節の痛みや血尿などが特徴です。検査値としては、尿酸値の上昇が特徴です。この患者からは推定されないと考えられます。(尿酸値の値が、普通ならある気もするけど。。。紛らわしくなるから、問題作成の都合上、省略した・・?)

選択肢 2 ですが
糖尿病は、血中のブドウ糖が多くなっている状態です。空腹時血糖や HbA1c に異常はなくこの患者からは、推定されません。

選択肢 3 は、正しい選択肢です。
ネフローゼは、高度なタンパク尿により、低タンパク血症を来す疾患です。結果、むくみなどが生じます。ちなみに血中のタンパク質が減ることからフィードバックにより、タンパク合成が亢進しリポ蛋白である、コレステロール値の上昇もみられます。

選択肢 4 ですが
急性肝炎は、急性の肝臓の炎症です。原因は、主に肝炎ウイルスなどです。AST,ALT に異常はなく、この患者からは推定されません。

選択肢 5 ですが
多発性硬化症とは、中枢神経において繰り返しおきる炎症です。結果、神経組織におけるミエリン障害(脱髄)が引き起こされ、神経伝達がうまくいかなくなり種々の症状として表れます。原因はよくわかっていません。

症状としては、ものの見え方がへんになる、ろれつが回らなくなる、歩くとふらつく など様々な中枢症状が見られます。主訴にそのような点は見られずこの患者からは推定されません。

以上より、正解は 3 です。

コメント