公務員試験 H30年 国家専門職(教養) No.38解説

 問 題     

基本的人権に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.日本国憲法において,基本的人権は,法律の認める範囲内で保障される権利として位置付けられており,全ての国民は,基本的人権を保障するために,憲法を尊重し,擁護する義務を負うものとされている。

2.日本国憲法において,思想・良心の自由は,公共の福祉によって制限されるものであることが明示的に規定されているが,最高裁判所は,三菱樹脂事件で,特定の思想を持つことを理由に企業が本採用を拒否することは違憲であると判示した。

3.日本国憲法は,表現の自由を健康で文化的な最低限度の生活を営むために侵すことのできない権利として保障し,検閲を例外なく禁止しており,最高裁判所は,家永訴訟で,教科書検定は検閲に当たるため違憲であると判示した。

4.日本国憲法は,法の下の平等の原則を定め,人種,性別,能力等による差別の禁止や,家庭生活における両性の平等を定めており,最高裁判所は,夫婦別姓を認めない民法の規定を違憲であると判示した。

5.日本国憲法は,身体(人身)の自由を保障するため,法律の定める手続によらなければ刑罰を科せられないことを定めており,また,自己に不利益な供述の強要を禁止するとともに,不当に長く抑留や拘禁された後の自白を証拠とすることができないとしている。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
憲法第 11 条によれば「国民は、すべての基本的人権の享有(きょうゆう)を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」とあります。「法律の認める範囲内で保障される権利」ではありません。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
憲法第 19 条によれば「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」とあります。「公共の福祉によって制限されるものであることが明示的に規定」されてはいません。また、三菱樹脂事件では「特定の思想を持つことを理由に、企業が採用拒否することが違憲である」とは判示していません。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
「健康で文化的な最低限度の生活」を保証する権利は「生存権」です。また、最高裁判例によれば、「教科書検定は検閲には当たらない」と判示されています。この理由は、検定が一般図書としての発行を何ら妨げるものでない等です。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
夫婦別姓を認めない規定について、違憲とは判示されていません。よって、選択肢 4 は誤りです。

以上より、1~4誤りなので正解は 5 です。

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