公務員試験 H30年 国家専門職(教養) No.37解説

 問 題     

近・現代の西洋の哲学者に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.ヘーゲルは,社会における法と個人における道徳を統合したものを人倫と呼んだ。人倫は,家族,市民社会,国家という3 段階の形を経て発展し,国家は家族と市民社会を統合したものであると考えた。

2.キルケゴールは,実存が深まっていく段階を,順に倫理的実存,美的実存,宗教的実存の三つに分け,倫理的な義務を果たそうとして自己の無力さを知った者が,刹那的な快楽を求め,神との関係から逃れることで本来の自己を回復するとした。

3.マルクスは,私有財産制度のない理想社会を描いた『ユートピア』で,生産手段を公有にして,全ての人が平等に働く社会主義を説き,農村的な協同組合を基礎単位とするファランステールという理想的な共同社会を目指した。

4.ヤスパースは,人間が限界状況に直面したときに,互いに隠し事や,偽りを持たず,心を開いて他者と語り合い,誠実に自分を伝え合う自己外化を通して,自らの限界に気付きを得て,無知の知に至ると説いた。

5.ハイデッガーは,「存在とは何か」を問いかけることができる人間の在り方を現存在と呼び,世界が存在することを見守るにすぎない「存在の牧人」を批判し,人間が主人となって存在するものを対象として扱う人間中心主義を説いた。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は、妥当な記述です。

選択肢 2 ですが
キルケゴールが唱えたのは「美→倫理→宗教」の順です。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
「ファランステール」を提唱したのは「空想的社会主義」の代表的思想家である「シャルル・フーリエ」です。マルクスではありません。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
ヤスパースが唱えたのは「実存に目覚める」です。「無知の知に至る」ではありません。「無知の知」は、ギリシャ哲学ソクラテスの至った境地です。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
ハイデガーは人間を「存在の牧人」と表現しました。批判したわけではありません。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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