公務員試験 H30年 法務省専門職員 No.2解説

 問 題     

行動経済学やヒューリスティックに関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.トヴェルスキーとカーネマン(Tversky, A. & Kahneman, D., 1981)は,劇場に着いたときに,10 ドル札を無くしたことに気付いても10 ドルのチケットを買おうとする人の割合と,10 ドルのチケットを無くしたことに気付いても再び10 ドルのチケットを買おうとする人の割合はほぼ等しいことを示した。金銭的な意思決定問題を心的に処理する様式は心的会計(mental accounting)と呼ばれ,対象や形態にかかわらず同一の心的会計が用いられる。

2.「ある40 歳の女性が乳がんの検査を受けたところ陽性であった。40 歳の女性が乳がんにかかる確率は1 % である。この検査では,乳がんの人が陽性になる確率は90 % であり,乳がんでない人が陽性になる確率は9 % である。この女性が乳がんである確率は何% か。」という問いに対して,「40 歳の女性が乳がんにかかる確率は1 % である」という基準確率を無視し,当該女性が乳がんである確率を実際よりも低く見積もる傾向があるとされている。

3.トヴェルスキーとカーネマンのプロスペクト理論では,客観的に低い確率で生起する事象が起きる確率については過小評価し,客観的に高い確率で生起する事象が起きる確率については過大評価する傾向があると考える。例えば,「20 % の確率で当選する」くじの場合には自分の当選する確率を20 % より低く評価し,「80 % の確率で当選する」くじの場合には,80 % より高く評価しやすいとされている。

4.不動産の仲介業者が提示する物件の販売価格の方が,その物件に入居しているオーナーが提示する販売価格よりも高い傾向がある。このように,ある財を保有している場合につけるその財の価格が,その財を保有していない場合につける価格よりも低くなる現象を保有効果又は賦存効果という。これは,一旦財を所有すると,所有したこと自体に満足し,その財に対して執着しなくなるために生じるとされている。

5.「今, 1 万円得る」か「明日, 1 万1 千円得る」では前者を選択しても,「1 年後に1 万円得る」か「1 年と1 日後に1 万1 千円得る」では後者を選択するように,即時小報酬と遅延大報酬の選択場面で即時小報酬を選択しても,等しい遅延時間を加えると,遅延大報酬を選択する現象を選好逆転という。このように,長期的には忍耐強いが,短期的には近視眼的であるという時間非整合的な選好を有することを表すための割引関数モデルに双曲的割引モデルがある。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
「10ドルのチケットをなくして、再び10ドルのチケットを買う」方が割合が少ないことが知られています。映画を見るのにかかるコストが20ドルと解釈され、割高と感じるからであると説明されます。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
基準率課題における基準率錯誤についての記述です。このような課題において「正解からかけ離れた大きな値」を答える傾向が見られます。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
プロスペクト理論によれば「小さな確率は過大評価」され、「大きな確率は過小評価」されると考えます。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
保有効果とは、人が何かを所有した時に、それに「高い価値」を感じ、手放したくないと感じる心理現象のことです。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
選好逆転についてです。

以上より、正解は 5 です。

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