公務員試験 H30年 法務省専門職員 No.1解説

 問 題     

神経伝達物質に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.アセチルコリンは,脊髄や脳幹等の運動ニューロンで作られる物質である。これを伝達物質とするコリン作動性ニューロンは,脳の広範囲な領域に存在しており,学習,記憶,注意等の脳機能に関与しているとされている。このコリン作動性ニューロンの損傷が,アルツハイマー病と関連すると考えられている。

2.ドーパミンは,カテコールアミンの一種である。これを伝達物質とするドーパミン作動性ニューロンは,延髄の縫線核に多く存在し,大脳皮質,間脳,小脳など,中枢系全域に枝葉を拡げているため,広範囲調節系と呼ばれている。てんかんとの関連が指摘されており,治療に使用される抗てんかん薬には,ドーパミンの過剰放出を抑える効果があると考えられている。

3.ノルアドレナリンは,カテコールアミンの一種であり,ノルエピネフリンとも呼ばれる。これは,抑制性神経伝達物質であり,大脳皮質,線条体,海馬等に高濃度で存在する。気分や情動に関与するため,抑うつ障害との関連が指摘されており,治療に使用される抗うつ薬には,ノルアドレナリンの放出を抑制する効果があると考えられている。

4.セロトニンは,アミノ酸の一種である。これを伝達物質とするセロトニン作動性ニューロンは,大脳基底核周辺の限られた範囲に存在している。また,セロトニンの代謝異常がパーキンソン病の一因となっていることが指摘されており,治療に使用される薬の代表例として選択的セロトニン再取り込み阻害薬が挙げられる。

5.GABA は,アミノ酸の一種であり,前駆物質はグルタミン酸である。GABA 神経系は,延髄の脳幹部から大脳皮質,大脳辺縁系,視床など,広範囲に投射しており,気分や情動,睡眠等に関与している。不安障害との関連が指摘されており,治療に使用される抗不安薬には,主にGABA 神経系の受容体部位でGABA の働きを減弱させ,神経細胞を興奮させる効果があると考えられている。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は妥当です。

選択肢 2 ですが
てんかんは脳内神経細胞の過剰な電気的興奮に伴い、意識障害やけいれんなどを発作的に起こす慢性的な脳の病気です。治療に使用される抗てんかん薬は、イオンチャネルにはたらきかけて興奮を抑制したり、GABA などの抑制系を強めるといった作用を有します。「治療に使用される抗てんかん薬には、ドパミンの過剰放出を抑える効果がある」という記述は妥当ではないと考えられます。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
ノルアドレナリンは、アセチルコリンと並び、副交感神経系における主要な「興奮性」神経伝達物質です。抑制性神経伝達物質ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
「大脳基底核周辺」、「パーキンソン病」といったキーワードに大きく関連するのは、セロトニンではなく「ドパミン」です。また、選択的セロトニン再取り込み阻害薬は、うつ症状の改善などに用いられます。パーキンソン病治療薬ではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
抗不安薬の効果として、GABA の働きを「促進」させる効果があると考えられています。減弱ではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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