公務員試験 H30年 国家一般職(行政) No.61解説

 問 題     

感覚や知覚に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.光や音等の刺激の検出に必要な最小の刺激量のことを弁別閾と呼ぶ。弁別閾は,刺激を提示したときに 100 % の確率でその存在を検出できるという基準で決められており,光の場合,「真っ暗闇の澄み渡った深夜,約 50 km 離れたロウソクの炎の明るさ」などと言われる。

2.ある刺激を見つめてから,目を閉じたり他の対象に視線を移したりしたときに感覚・知覚上に変化が生じる現象を文脈効果と呼ぶ。下方向に流れる滝を見続けた後,静止した対象に目を移すと,その対象も下方向に動いているような印象が生じる「滝錯視」は,その一例である。

3.踏切の警報ランプの光は,それぞれ一定の位置で交互に点滅しているだけであるが,あたかも左右や上下に連続的に運動しているかのように見える。このように,実際には生じていないにもかかわらず見かけの上で生じる運動を仮現運動と呼ぶ。

4.夜中に部屋の電気を消したり,明るい場所から暗い映画館に入ったりしたとき,当初は何も見えなくなるが,少しずつ周りの様子が見えるようになる。この現象は明順応と呼ばれ,網膜の光受容細胞のうち,錐体細胞の働きが関係している。

5.手に持ったスマートフォンを傾けたり,持っている手を伸ばしたりしても,スマートフォンが台形に変化したり,縮小したりしたように感じない。このように,対象を見る向きや距離が変化しても,その形や大きさが一定に保たれているように知覚される現象を知覚の体制化と呼ぶ。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
「二つの刺激の強さや性質の区別をし得る最小刺激差」が「弁別閾」です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
時間的に先行するある知覚が、後の知覚に影響することを残効といいます。滝錯視は運動残効の代表例です。下方向に流れる滝を見続けた後、静止した対象に目を移すと、対象が逆に見えるように感じます。「対象も下方向に動いているような印象が生じる」わけではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
仮現運動についての記述です。(参考 法務専門職 H27no21)。

選択肢 4 ですが
暗い場所で少しずつ周りの様子が見えるようになるのは「暗順応」です。(H28no61)。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
記述は「知覚の恒常性」についてです。(H28no61)。「知覚の体制化」とは、全体をまとまりとして見ようとする性質のことです。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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