公務員試験 H27年 法務省専門職員 No.21解説

 問 題     

錯覚に関する記述 A~D のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。

A. 時間的に先行するある知覚が、後の知覚に影響することを残効という。例えば、滝の水が流れ落ちるのをしばらく見た後に静止した物を見ると、滝とは逆に上がっていくように見える。このように動きの知覚が後の知覚に影響を与えることを、運動残効あるいは運動残像という。

B. 扇風機の羽根が適度な速度で回転すると、実際の回転方向とは逆方向に回転しているように見える。この現象はベクションと呼ばれるが、一般に、回転する物体は、その回転速度と視覚系の時間分解能との関係で、正順に回転して見えたり、静止して見えたり、逆回転して見えたりする。

C. 実際には知覚対象が動いていないにもかかわらず、視野内の他の運動によってあたかも対象が動いているように知覚される現象を誘導運動という。例として、群雲が流れていくと、月が雲の間を泳いでいくように見える現象などが挙げられる。

D. 対象物あるいは観察者の連続的な位置の移動に伴って知覚される運動を実際運動という。一方、暗闇で静止している観察者が静止光点をじっと見ていると、静止しているはずの光点がふらふらと動いて見えるが、このようにして知覚される運動を仮現運動という。

1. A B
2. A C
3. A D
4. B C
5. B D

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

記述 A は妥当です。
「滝の錯視」は「運動残効」の代表例です。

記述 B ですが
「ベクション」は「視覚誘導性自己運動感覚」です。代表例が VR 酔いです。自分が静止しているのに、視覚除法によって、自分が運動している感覚が生じる現象です。

記述 C は妥当です。
「誘導運動」とは、実際には静止している対象が、周囲の運動に伴い運動しているように見える現象です。

記述 D ですが
「自動運動」についての記述です。「仮現運動」ではありません。

関連事項として、アメリカの社会心理学者ムザファー・シェリフによる「集団の規範が個人の規範に与える影響」に関する実験があります。数人でこの自動運動の実験を行い「大体どれくらい動いたか」を、周りに聞こえるように報告させると、大体近い値におさまるという実験です。

以上より、妥当な記述は A,C です。正解は 2 です。

コメント