公務員試験 H27年 法務省専門職員 No.22解説

 問 題     

条件づけに関する記述として最も妥当なのはどれか。

1. 古典的条件づけとは、中性刺激と無条件刺激を対提示することにより、中性刺激が条件刺激に変わり、新しい反射を引き起こすようになる手続あるいは現象のことである。パヴロフ (Pavlov, I. P.) は、条件反射を試行錯誤に関する研究の手段として取り上げた。

2. オペラント条件づけとは、強化子によって条件刺激と条件反応の連合を強める手続のことである。この例として、トールマン (Tolman, E. C.) は、ラットを被験体として迷路学習の実験を行い、効果の法則を見いだした。

3. 分化とは、最終的な目標までの手順をいくつかに分け、段階的に強化を与えて行動を身に付けさせることである。サーカスなどで動物に複雑な芸を行わせる場合、一度に条件づけることができないので、この方法が用いられる。

4. 三項随伴性とは、オペラント条件づけにおける弁別刺激、オペラント、強化刺激という3項目の関係のことである。この中で、オペラントと強化刺激の関係は強化スケジュールと呼ばれ、様々な研究が行われている。

5. 生物学的制約とは、動物の種に固有な反応様式が条件づけを制約することである。例えば、ラットを使った嫌悪条件づけでは、電気ショックを無条件刺激とした場合には、音や光といった外的刺激よりも、味覚のような内的刺激に対する嫌悪学習がより効果的に進む。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
前半は妥当な記述です。中枢刺激の例として、ベルの音、無条件刺激の例としてエサがあげられます。後半ですが「試行錯誤」ではありません。「学習」に関する研究手段として取り上げたが妥当と考えられます。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
効果の法則」は、試行錯誤による学習の際、快状態をもたらす効果のある行動は生起しやすくなるという法則です。米国のソーンダイクが提唱しました。トールマンは、ネズミの迷路学習実験を通じて、行動は刺激と反応の単純なつながりではなく、間に内的過程が介在するとした「S-O-R理論」を提唱しました。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
「段階的に強化を与え行動を身に着けさせる」のはシェイピング法です。オペラント条件づけの理論に基づく技法の一つです。ベルの音とエサを同時に出すが、太鼓の音が鳴る時はエサが出ないようにすると、同じ音でもベルでは唾液が出るが、太鼓では出ないようにすることができます。これを「分化」条件づけといいます。ちなみに、類似の刺激で反応するようにした場合は「般化」といいます。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当な記述です。

選択肢 5 ですが
前半は妥当です。後半ですが、ラットに関して、電気ショックを無条件刺激とした場合には、音や光といった外的刺激の方が嫌悪学習が効果的に進むことが知られています。ちなみに、無条件刺激として嘔吐とすると、甘味などの内的刺激の方が、嫌悪学習が効果的に進みます。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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