公務員試験 H30年 国家一般職(行政) No.20解説

 問 題     

国家賠償法第1 条に関するア〜エの記述のうち,判例に照らし,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

ア.ある事項に関する法律解釈につき異なる見解が対立し,実務上の取扱いも分かれていて,そのいずれについても相当の根拠が認められる場合に,公務員がその一方の見解を正当と解してこれに立脚して公務を執行したときは,後にその執行が違法と判断されたからといって,直ちに当該公務員に国家賠償法第1 条第1 項にいう過失があったものとすることは相当でない。

イ.警察官のパトカーによる追跡を受けて車両で逃走する者が惹起した事故により第三者が損害を被った場合において,当該追跡行為が国家賠償法第1 条第1 項の適用上違法であるというためには,追跡が現行犯逮捕,職務質問等の職務の目的を遂行する上で不必要であるか,又は逃走車両の走行の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無・内容に照らして追跡の開始,継続若しくは方法が不相当であることを要する。

ウ.保健所に対する国の嘱託に基づいて公共団体の職員である保健所勤務の医師が国家公務員の定期健康診断の一環としての検診を行った場合,当該医師の行った検診行為は国の公権力の行使に当たる公務員の職務上の行為と解すべきであり,当該医師の行った検診に過誤があったため受診者が損害を受けたときは,国は国家賠償法第1 条第1 項の規定による損害賠償責任を負う。

エ.国又は公共団体以外の者の被用者が第三者に損害を加えた場合において,当該被用者の行為が国又は公共団体の公権力の行使に当たるとして国又は公共団体が被害者に対して国家賠償法第1 条第1 項に基づく損害賠償責任を負うときであっても,同項は組織法上の公務員ではないが国家賠償法上の公務員に該当する者の使用者の不法行為責任まで排除する趣旨ではないから,使用者は民法第715 条に基づく損害賠償責任を負う。

1.ア,イ
2.ア,ウ
3.イ,エ
4.ア,イ,エ
5.イ,ウ,エ

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

記述 ア は妥当です。
外国人の国民健康保険に関する最判 H16.1.15 の通りです。違法であれば当然に過失が認められるもの、ではありません。

記述 イ は妥当です。
パトカーの追跡行為による第三者の損害に関する、最判 S61.2.27 の通りです。 

記述 ウ ですが
保健所勤務の医師による健康診断に関する、最判 S57.4.1 によれば、レントゲン写真による検診と結果報告は、医師が一般的にする診断行為です。特段の事由がなければ、公権力の行使にはなりません。「公権力の行使にあたる、公務員の職務上の行為」に該当しないため、国による損害賠償責任はありません。(H26no19 ア)。記述 ウ は誤りです。

記述 エ ですが
児童養護施設での傷害事件と国家賠償に関する、最判H19.1.25 によれば、「国又は公共団体以外の者の被用者が第三者に損害を加えた場合であっても、当該被用者の行為が国又は公共団体の公権力の行使に当たるとして国又は公共団体が国家賠償法第1条第1項に基づく損害賠償責任を負うときは、使用者は民法第715条に基づく損害賠償責任を負わない」とされています。(H26no19 イ)。記述 エ は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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