公務員試験 H26年 国家一般職(行政) No.19解説

 問 題     

国家賠償に関するア~オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

ア. 保健所に対する国の嘱託に基づいて地方公共団体の職員である保健所勤務の医師が国家公務員の定期健康診断の一環としての検診を行った場合において、当該医師の行った検診又はその結果の報告に過誤があったため受診者が損害を受けたときは、国は、国家賠償法第1条第1項による損害賠償責任を負う。

イ. 国又は公共団体以外の者の被用者が第三者に損害を加えた場合であっても、当該被用者の行為が国又は公共団体の公権力の行使に当たるとして国又は公共団体が国家賠償法第1条第1項に基づく損害賠償責任を負うときは、使用者は民法第715条に基づく損害賠償責任を負わない。

ウ. 裁判官がした争訟の裁判に上訴等の訴訟法上の救済方法によって是正されるべき瑕疵が存在したとしても、これによって当然に国家賠償法第1条第1項のいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任の問題が生じるものではないが、国の損害賠償責任が肯定されるために,当該裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認められるような特別の事情があることまで必要となるものではない。

エ. 国会議員の立法行為又は立法不作為は、その立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国家賠償法第1条第1項の適用上、違法の評価を受ける。

オ. 行政処分が違法であることを理由として国家賠償請求をするためには、あらかじめ当該行政処分について取消し又は無効確認の判決を得なければならないものではないが、当該行政処分が金銭を納付させることを直接の目的としている場合には、その違法を理由とする国家賠償請求を認容したとすれば、結果的に当該行政処分を取り消した場合と同様の経済的効果が得られるときであっても、取消訴訟等の手続を経ることなく国家賠償請求をすることはできない。

1. アウ
2. イエ
3. ウオ
4. エオ
5. アイウ

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

記述 ア ですが
保健所勤務の医師による健康診断に関する、最判昭57.4.1 によれば、検診又は結果報告に過誤があつたため受診者が損害を受けても国は、国家賠償法 1 条 1 項による損害賠償責任を負いません

この理由ですが、レントゲン写真による検診と結果報告は、医師が一般的にする診断行為です。特段の事由がなければ、公権力の行使にはなりません。「公権力の行使にあたる、公務員の職務上の行為」に該当しないため、国による損害賠償責任はありません。記述 ア は誤りです。

記述 イ は妥当です。
児童養護施設での傷害事件と国家賠償に関する、最判H19.1.25 です。

記述 ウ ですが
裁判官の国家賠償責任に関する、最判 S57.3.12 によれば、「裁判官が付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したと認められるような特別の事情があること」が「必要」です。記述 ウ は誤りです。

記述 エ は妥当です。
在外邦人選挙権確認訴訟の判決(最大判 H17.9.14) です。

記述 オ ですが
取消訴訟等の手続きを経ず国家賠償請求できます。(最判平22.6.3)。記述 オ は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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