公務員試験 H30年 国家一般職(行政) No.9解説

 問 題     

地方自治に関するア〜エの記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

ア.大陸系諸国では,市町村の事務権限を法律で定める際,概括授権(概括列挙)方式と呼ばれる方法で定められており,これは,自治体が実施できる事務や行使できる権限を網羅的に一つ一つ列挙し,国と自治体の役割を分離することが特徴である。

イ.スイスでは,地方自治における直接民主制として住民総会が実施されており,人口の増加等に伴って,都市部では次第に議会制に切り替えられているものの,イニシアティブやレファレンダムが活用されていることが自治の特徴となっている。

ウ.第二次世界大戦後の我が国の地方制度改革では,日本国憲法の第8 章に「地方自治」の章が創設された。その後,「地方自治の本旨」が初めて規定されたのが地方自治法であり,これにより都道府県が完全自治体となり,首長が公選から官選に改められるなど,地方分権が進んだ。

エ.我が国で昭和24(1949)年に提出されたシャウプ勧告は,国と地方の事務の再配分において,都道府県を第一優先とし,そのためには都道府県の財政基盤を強化する必要があることを主張し,国の負担する補助金の整理,国税と地方税の融合,地方財政平衡交付金制度の創設から成る三位一体の改革を提言した。

1.イ
2.ウ
3.エ
4.ア,イ
5.ウ,エ

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

記述 ア ですが
地方自治について、西欧諸国は大きく、イギリスを母国とするアングロ・サクソン系と、フランスを母国とする大陸系諸国に大別されます。大陸系はフランスの他、ドイツ、イタリア、スペインなどです。前半部分の「大陸系」と、「
概括授権方式」の対応は妥当です。しかし、後半の記述は「制限列挙方式」の授権についてです。記述 ア は誤りです。

記述 イ は妥当です。
スイスの地方自治についての記述です。

記述 ウ ですが
地方自治とは、地方住民の意思に基づく地方運営です。そうであれば、地方の TOP は住民が選ぶ「公選」であるべきです。「公選から官選」で「地方分権が進んだ」という記述はおかしいと判断できるのではないでしょうか。記述 ウ は誤りです。

記述 エ ですが
シャウプ勧告は、地方財政強化を大きな目的とし、具体的内容は、「地方税独立」「直接税中心主義」などです。「国税と地方税の融合」や、「地方財政平衡交付金制度創設」ではありません。記述 エ は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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