公務員試験 H30年 国家一般職(行政) No.8解説

 問 題     

行政統制・行政責任に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.我が国の会計検査院は,行政機関の金銭的な出納が適切かという点から,常時会計検査を行うとともに,国の収入と支出の決算の検査を行い,その結果を内閣総理大臣に提出する。法令違反や不当な会計処理が行われている場合は,直ちに内閣総理大臣に是正を求めなければならない。

2.M.ディモックは,組織の職員の勤労意欲や組織に所属していることに関する満足感等の社会的能率を,機械的な能率観であると批判し,経費の投入と作業量,効果等の産出の比率で判断する能率が真の能率であると主張した。

3.我が国では平成11(1999)年に,「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」が制定され,同法では,国の行政機関が保有する情報の公開によって,政府が行っている諸活動を国民に説明する責務とともに,国民の知る権利の保障が規定された。政府が国民に説明するこのような責務のことを,一般にナショナル・ミニマムと呼ぶ。

4.C.E.ギルバートは,行政統制について,行政官それぞれが自らの内部に有する自律的責任の有無と,統制主体が外在的か内在的かという二つの軸によって,自律的外在的統制,自律的内在的統制,応答的外在的統制,応答的内在的統制という4 類型による整理を行った。

5.我が国の地方公共団体の財務に関する事務の執行等の監査は,公認会計士や弁護士,行政職員経験者など識見を有する者及び議員のうちから,首長が議会の同意を得て選任する監査委員が担っている。また,住民が監査委員に監査を請求することも認められている。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
会計検査院の検査を行った後提出するのは「内閣」です。内閣総理大臣ではありません。また、法令違反や不当な会計処理が行われている場合について、「直ちに内閣総理大臣に是正を求めなければならない」わけではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
ディモックは、職員やサービス利用者の満足といった、行政の社会的有効性を基準として評価される能率である「社会的能率」を提唱しました。「社会的能率を、機械的な能率観であると批判」したわけではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
説明責任は「アカウンタビリティ」です。ナショナル・ミニマムとは、憲法 25 条に基づき、全国民に対し保障する. 「健康で文化的な最低限度の生活」水準のことです。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
ギルバートは、制度的 (formal)、非制度的 (informal) 統制の軸と、問責の主体が行政機関の外部に位置する外在的 (external)、行政機関の内部に位置する内在的 (internal) 統制の軸という2つの軸の交差から生じる4分類によって、行政統制の性質を示しました。(H27no8)。「自律的責任の有無」という軸ではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
監査委員についての記述です。

以上より、正解は 5 です。

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