公務員試験 H30年 国家一般職(行政) No.7解説

 問 題     

我が国の意思決定システムに関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.行政機関による決定が,どのような基準や手続で行われているのかを,決定の相手方(国民や企業等)が知ることができるようにするため,平成5(1993)年に行政手続法が制定され,各府省は,法律や予算の立案過程を府省のウェブサイトで公表することが義務付けられた。

2.憲法との整合性が求められる法律案については,内閣法制局がその内容や形式を審査し,一方で,憲法との整合性が問題とならない法律案については,内閣法制局ではなく,各府省の文書審査の担当課が審査し,迅速に閣議決定と国会への法案提出が行われる仕組みとなっている。

3.稟議制は,行政組織の末端の者によって起案された稟議書を順次上位者に回覧し,承認を求め,最終的に決裁者に至る方式であり,辻清明は,その効用を,議案の決定過程に関係する全ての組織成員が参加できるため,決定後に関係者からの異議が生じるのを未然に防ぐことにあるとした。

4.政府委員制度は,国会審議において,国務大臣を補佐するために内閣が政府委員を任命する制度であったが,平成11(1999)年に制定された「国会審議の活性化及び政治主導の政策決定システムの確立に関する法律」によって廃止され,中央省庁等再編以降,国務大臣,副大臣,大臣政務官,政務次官以外の者は国会答弁をすることができなくなった。

5.審議会は,国会の本会議や委員会の審議に対する専門知識の提供や政策に関わる利害の調整を目的として,国会法に基づいて設置され,有識者等で構成される合議制の諮問機関であり,国会の補助機関として国会の審議や議決を支援している。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
行政手続法の目的は「共通ルールにより、行政運営の公正確保と透明性向上を図ること」です。「決定の相手方が知ることができるようにするため」に制定されたわけではありません。いわゆる国民の「知る権利」を具体化することを目的とした法律としては情報公開法があげられます。選択肢 1 は誤りと考えられます。

選択肢 2 ですが
内閣提出法律案は、内閣法制局が審査します。「憲法との整合性が求められる法律案については」というわけではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
稟議制についての記述です。

選択肢 4 ですが
前半部分は妥当です。H11 年、政府委員制度は廃止されました。とはいえ、行政に関する細かい話や技術的事項について、各省庁局長などが答弁する必要もあるため、政府参考人制度が設けられました。「国務大臣,副大臣,大臣政務官,政務次官以外・・・答弁・・・できなくなった」わけではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
審議会とは、国の行政機関に附属し、その長の諮問に応じて、特別の事項を調査、審議する合議制の機関をいいます。国家行政組織法8条が根拠です。「八条機関」と呼ばれます。国会法に基づいて設置されるわけではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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