公務員試験 H29年 法務省専門職員 No.7解説

 問 題     

知能検査や発達検査に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.新版K式発達検査2001 は,姿勢-運動領域,認知-適応領域,言語-社会領域から成り,それぞれの領域とそれらを合計した全領域について発達年齢及び発達指数を算出することができるため,おおまかな発達のバランスを見ることができる。課題は年齢級順に並んでおり,定められた順序で実施する。対象年齢は0 歳から6 歳11 か月であり,就学前の子供に実施することが多いが,発達に遅れが見られる場合は, 7 歳以上であっても実施は可能である。

2.日本版 KABCーⅡは,認知処理過程と習得度を測定できることや,認知処理過程を継次処理過程と同時処理過程に分けて測定できることが大きな特徴である。対象年齢は2 歳6 か月から12 歳11 か月であり,就学前から中学校入学前後までの子供の得意な認知処理スタイルを見つけることはできるが,既存の知能検査とは異なり,検査結果を子供の教育・支援計画と結び付けて考えることには不向きである。

3.DNーCAS 認知評価システムは,PASS 理論に基づき,問題解決の方法を決定,選択,適用,評価する過程であるプランニング(Planning),競合する刺激に対する反応を抑制する一方で,特定の刺激に対して選択的に注意を向ける過程である注意(Attention),分割された刺激を単一のグループにまとめる過程である同時処理(Simultaneous),特定の系列的順序で,鎖のような形態で刺激を統合する過程である継次処理(Successive)の四つの認知処理過程を評価する検査である。

4.田中ビネー知能検査Ⅴは, 1 歳級から13 歳級まで,年齢級ごとに問題が設定されているほか,14 歳級以上に当たる成人級の問題も設定されている。14 歳以上は,精神年齢と生活年齢の比率に基づく知能指数と,年齢水準ごとの偏差知能指数しか算出することができないが, 2 歳以上14 歳未満については,四つの領域別の偏差知能指数と,全領域をまとめた総合偏差知能指数を算出することができる。

5.WISCーⅣ は,10 の基本検査と5 の補助検査から成っており,言語理解,ワーキングメモリー,知覚統合,処理速度の四つの指標得点に加えて,言語性知能指数,動作性知能指数,全検査知能指数を算出することができる。全検査知能指数を第1 層に,言語性知能指数と動作性知能指数を第2 層に,言語理解,ワーキングメモリー,知覚統合,処理速度の各指標を第3 層に持つ因子構造は,CHC(Cattell-Horn-Carroll)理論に基づいている。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
新版 K 式発達検査 は、発達の遅れや偏りを多面的に評価する検査です。対象年齢が拡大傾向にあり、2001 では、0歳から成人までが適応となっています。「対象年齢が0歳から6歳11ヶ月」ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
KABC は「Kaufman Assessment Battery for Children」の略です。日本版KABC-Ⅱは、認知処理を、継次処理と同時処理だけでなく、学習能力、計画能力を含めた4つの能力から測定適応年齢の上限が18歳11カ月まで拡大、といった特徴を有します。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
DN-CAS は「Das-Naglieri Cognitive Assessment System」の略です。

選択肢 4 ですが
田中ビネー知能検査Ⅴは、2歳~成人が適用年齢です。特徴としては、14歳以上について「偏差知能指数」を用いること、成人の知能については、4つの領域(結晶性、流動性、記憶、論理推理)に分けて分析的に評価する点などがあげられます。記述は 2歳以上14歳未満について と、14歳以上について の記述が逆です。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
ウェクスラー児童用知能検査は、知能を多因子構造としてとらえた知能検査です。WISC – Ⅳ は、WISC-III の改訂版です。 下位検査の削除、増加などが行われ、検査構成が変化しました。特に言語性と動作性 の区別がなくなっているのが特徴です。5歳0カ月~16歳11カ月が対象で、全15の下位検査(基本検査:10、補助検査:5)構成です。10の基本検査実施で、5つの得点(全検査 IQ + 4つの指標得点)が算出されます。(類題 H27no8)

「言語性知能指数、動作性知能指数・・・を算出することができる」とあるため、誤りと判断できるのではないでしょうか。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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