公務員試験 H29年 国家一般職(行政) No.16解説

 問 題     

行政指導に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.行政指導に携わる者は,当該行政指導をする際に,行政機関が許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を行使し得る旨を示すときは,その相手方に対して,当該権限を行使し得る根拠となる法令の条項を示せばよく,当該条項に規定する要件まで示す必要はない。

2.法令に違反する行為の是正を求める行政指導の根拠となる規定が法律に置かれている場合,当該行政指導の相手方は,当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思料するときは,当該行政指導をした行政機関に対し,その旨を申し出て,当該行政指導の中止を求めることができる。また,当該申出を受けた行政機関は応答義務を負うと一般に解されている。

3.何人も,法令に違反する事実があり,その是正のためにされるべき行政指導がされていないと思料する場合は,当該行政指導の根拠となる規定が法律に置かれているときに限り,当該行政指導をする権限を有する行政機関に対し,その旨を申し出て,当該行政指導をすることを求めることができる。

4.同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときに,これらの行政指導に共通してその内容となるべき事項を定めた行政指導指針は,原則として意見公募手続の対象とはならない。

5.行政指導は相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであるから,行政指導に携わる者は,相手方に行政指導に応じるよう説得を重ねることは一切許されず,また,その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として,不利益な取扱いをしてはならない。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
行政手続法 35 条 2 項によれば、行政指導の際、許認可等の権限を行使し得る旨を示す時は、根拠となる法令の条項だけでなく、当該条項に規定する要件、及び、要件適合理由を示さなければなりません。選択肢 1 は誤りです。

(もしこの規定がなかったら、行政指導にかこつけ、関係ない条項を挙げた上で法律に基づかない不許可をちらつかせることで、法に基づかない、指導への実質的な強制、権利制限がありえる、っていう話です。)

選択肢 2 ですが
行政手続法 36 条の 2 によれば、第一文は妥当です。第二文について、調査義務 及び、要件不適合時の措置義務は行政手続法に規定されていますが「応答義務」は規定されておらず、負わないと考えられます。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
行政手続法 36 条の 3 です。

選択肢 4 ですが
行政指導指針は「命令等」に該当します(行政手続法 2 条 8 号 ニ)。命令等を定めようとする時には、意見公募手続きが必要です。(行政手続法 39 条 1 項)。従って、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
「説得を重ねることが一切許されない」わけではありません。その他の記述は妥当です。(行政手続法 32 条)。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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