公務員試験 H29年 国家一般職(行政) No.14解説

 問 題     

司法権に関するア〜オの記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

ア.訴訟が具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争の形式をとっており,その結果信仰の対象の価値又は宗教上の教義に関する判断は請求の当否を決するについての前提問題にとどまるものとされていても,それが訴訟の帰すうを左右する必要不可欠のものであり,紛争の核心となっている場合には,当該訴訟は法律上の争訟に当たらないとするのが判例である。

イ.大学は,私立大学である場合に限り,一般市民社会とは異なる特殊な部分社会を形成しているということができるため,単位授与(認定)行為は,一般市民法秩序と直接の関係を有すると認められる特段の事情のない限りは,当該私立大学の自主的な判断に委ねられるべきものであり,司法審査の対象にはならないとするのが判例である。

ウ.司法権は全て通常の司法裁判所が行使するため,特別裁判所は設置することができないとされており,最高裁判所の系列下に所属させる場合であっても,特定の人や種類の事件について裁判をするための裁判機関を設けることは認められていないほか,行政機関による終審裁判も認められていない。

エ.最高裁判所及び下級裁判所には,権力分立の観点から裁判所の自主性を確保するための規則制定権がそれぞれ独自に認められており,その対象は,裁判所の内部規律や司法事務処理など裁判所の自律権に関するもののほか,訴訟に関する手続など一般国民が訴訟関係者となったときに拘束されるものも含まれる。

オ.全て司法権は最高裁判所及び下級裁判所に属するため,一般国民の中から選任された陪審員が審理に参加して評決するような制度は,職業裁判官が陪審の評決に拘束されないとしても憲法上認められないが,一般国民の中から選任された裁判員が職業裁判官と合議体を構成して裁判を行う制度は,憲法上認められるとするのが判例である。

1.ア
2.ア,エ
3.イ,ウ
4.エ,オ
5.ウ,エ,オ

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

記述 ア は妥当です。
板まんだら事件の判例です。

記述 イ ですが
富山大学事件判例によれば、「国公立であると私立であるとを問わず……一般市民社会とは異なる特殊な部分社会を形成している」と判示しています。「私立大学である場合に限り」ではありません。記述 イ は誤りです。

記述 ウ ですが
憲法 76 条第2項によれば、特別裁判所は設置できません。前半部分は妥当です。後半部分ですが、家庭裁判所は少年事件と家事事件のみを扱います。また、知的財産高等裁判所は、知的財産に関する事件を専門的に取り扱います。このように「特定の種類の事件について裁判をするための裁判機関」が認められています。ちなみに、「行政機関による終審裁判が認められていない」という部分は妥当です。記述 ウ は誤りです。

記述 エ ですが
前半部分は妥当です。裁判所の規則制定権についての記述です。後半部分ですが、「一般国民が訴訟関係者となったときに拘束されるものも含まれる」という部分が誤りです。

規則制定権の趣旨は、裁判に関わる事項は専門的判断・知識を尊重すべきである、というものです。そして、規則制定権は、裁判所の組織や、裁判の実体形成に直接的に関連する事項、国民の権利に影響を及ぼすべき事項といったものについては含まれません。従って、「一般国民が訴訟関係者となったときに拘束されるもの」は含まれないと考えられます。記述 エ は誤りです。

記述 オ ですが
判例(裁判員制度合憲判決:最大判 H23.11.16) によれば、「憲法は、一般的には国民の司法参加を許容しており、これを採用する場合には・・・、諸原則が確保されている限り、陪審制とするか参審制とするかを含め、その内容を立法政策に委ねていると解される」とあります。「陪審員が・・・憲法上認められない」という判断ではありません。記述 オ は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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