公務員試験 H29年 国家一般職(行政) No.12解説

 問 題     

経済的自由権に関するア〜オの記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

ア.憲法第22 条第1 項が保障する居住・移転の自由は,経済活動の目的だけでなく,広く人の移動の自由を保障するという意味において,人身の自由としての側面を有すると一般に解されている。

イ.憲法第22 条第2 項が保障する外国に移住する自由には外国へ一時旅行する自由が含まれるが,外国旅行の自由といえども無制限のままに許されるものではなく,公共の福祉のために合理的な制限に服するとするのが判例である。

ウ.酒税法による酒類販売業の許可制は,致酔性を有する酒類の販売を規制することで,国民の生命及び健康に対する危険を防止することを目的とする規制であり,当該許可制は,立法目的との関連で必要かつ合理的な措置であるといえ,より緩やかな規制によっては当該目的を十分に達成することができないと認められることから,憲法第22 条第1 項に違反しないとするのが判例である。

エ.憲法第29 条にいう「財産権」とは,所有権その他の物権や債権といった私法的な権利を指し,水利権や河川利用権といった公法的な権利は含まれない。

オ.憲法第29 条第3 項にいう「公共のために用ひる」とは,学校や道路の建設といった公共事業のために私有財産を直接供する場合を指し,広く社会公共の利益のために私有財産の収用を行う場合は含まれない。

1.ア,イ
2.ア,エ
3.イ,ウ
4.ウ,オ
5.エ,オ

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

記述 ア は妥当です。
居住・移転の自由についての記述です。

記述 イ は妥当です。
帆足計(ほあしけい:昭和時代の政治家さんです。)事件(最大判S33.9.10) の判例です。

記述 ウ ですが
酒税法による酒類販売業の許可制は、「必要性と合理性についての立法府の判断が・・・著しく不合理なものでないかぎり、違憲ではない」という基準による合憲判定が判例です。(酒類販売業免許制事件)。「より緩やかな規制によっては・・・目的達成できない」という、いわゆる LRA 基準による判定ではありません。記述 ウ は誤りです。

記述 エ ですが
水利権や河川利用権といった公法的な権利であっても、財産権的性質を含む限り、憲法 29 条の財産権に含まれると解されます。記述 エ は誤りです。

記述 オ ですが
憲法 29 条 第3項の「公共のために」とは、広く社会公共のためであればよく、「用いる」とは、財産の収用も含まれます。従って、広く社会公共の利益のために私有財産の収用を行う場合も含まれます。記述 オ は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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