公務員試験 H29年 国家一般職(行政) No.11解説

 問 題     

信教の自由に関するア〜オの記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

ア.憲法第20 条第1 項前段は,「信教の自由は,何人に対してもこれを保障する」と規定している。ここにいう信教の自由には,内心における信仰の自由及び宗教的行為の自由が含まれるが,宗教的結社の自由は,憲法第21 条第1 項で保障されていることから,信教の自由には含まれないと一般に解されている。

イ.内心における信仰の自由とは,宗教を信仰し又は信仰しないこと,信仰する宗教を選択し又は変更することについて,個人が任意に決定する自由をいう。内心における信仰の自由の保障は絶対的なものであり,国が,信仰を有する者に対してその信仰の告白を強制したり,信仰を有しない者に対して信仰を強制したりすることは許されない。

ウ.知事が大嘗祭に参列した行為は,それが地方公共団体の長という公職にある者の社会的儀礼として,天皇の即位に伴う皇室の伝統儀式に際し,日本国及び日本国民統合の象徴である天皇の即位に祝意を表する目的で行われたものであるとしても,大嘗祭が神道施設の設置された場所において神道の儀式にのっとり行われたことに照らせば,宗教との過度の関わり合いを否定することはできず,憲法第20 条第3 項に違反するとするのが判例である。

エ.死去した配偶者の追慕,慰霊等に関して私人がした宗教上の行為によって信仰生活の静謐が害されたとしても,それが信教の自由の侵害に当たり,その態様,程度が社会的に許容し得る限度を超える場合でない限り,法的利益が侵害されたとはいえないとするのが判例である。

オ.市が町内会に対し無償で神社施設の敷地としての利用に供していた市有地を当該町内会に譲与したことは,当該譲与が,市の監査委員の指摘を考慮し,当該神社施設への市有地の提供行為の継続が憲法の趣旨に適合しないおそれのある状態を是正解消するために行ったものであっても,憲法第20 条第3 項及び第89 条に違反するとするのが判例である。

1.ア,ウ
2.ア,エ
3.イ,エ
4.イ,オ
5.ウ,オ

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

記述 ア ですが
憲法 20 条第1項前段にいう「信教の自由」は、「信仰の自由、宗教的行為の自由、宗教的結社の自由」を保障します。信仰の自由は 19 条、宗教的行為・結社の自由は 21 条でも保障されますが、明治憲法下における信教の自由の制限などを反省して、あえて 20 条がおかれたと解されます。記述 ア は誤りです。

記述 イ は妥当です。

記述 ウ ですが
鹿児島県大嘗祭参列違憲訴訟によれば、大嘗祭(だいじょうさい)に知事が参列した行為は、1.大嘗祭が皇位継承の際に通常行われてきた皇室の伝統儀式である、2.他の参列者と共に参列して拝礼したにとどまる、3.社会的儀礼として天皇の即位に祝意を表する目的で行われた、などの事情により、違憲ではありません。記述 ウ は誤りです。

記述 エ は妥当です。
自衛官合祀拒否訴訟の判例です。

記述 オ ですが
砂川政教分離訴訟(富平神社)の判例によれば、違憲ではありません。記述 オ は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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