公務員試験 H29年 国家一般職(行政) No.10解説

 問 題     

我が国の地方自治制度に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.地方公共団体の長とその議会は,共に住民の代表機関として位置付けられる。このような代表機関同士における権力の抑制・均衡を図るため,議会による長の不信任の議決に対し,長は30日以内に議会を解散することができ,解散後初めて招集された議会において再び不信任の議決があったときは,長は直ちに議会を解散しなければ失職することとされている。

2.地方公共団体には,執行機関として長のほかに審議会を置くことができる。長と並ぶ執行機関として審議会を設置することによって,長の権力を牽制し,政治的中立性の確保が求められる領域への長による過度な介入や干渉を防ぐことを目的としており,各審議会には,規則制定権に加えて,条例案や予算を議会に直接提出する権限が認められている。

3.地方公共団体の長とその議会の議員は,それぞれ住民の選挙によって選ばれるため,長と議会の多数派の立場や主張が常に一致するとは限らない。しかし,長がリーダーシップを発揮するためには議会の多数派の支持が不可欠であり,住民の投票傾向が一致しやすくなるよう,都道府県知事の選挙は全て,統一地方選挙として議会の議員の選挙と同じ4 月に実施されている。

4.地方公共団体の議会は,地方自治法第100 条の規定に基づき,当該地方公共団体の事務に関する調査を行うことができる。調査を行うため特に必要があると認めるときは,選挙人等の関係人の出頭・証言や記録の提出を請求することができ,請求を受けた関係人が正当の理由がないのに議会に出頭しなかったり,証言を拒んだりしたときなどは,罰則の対象とされている。

5.地方公共団体における特定の機関等の設置の義務付けは,第一次地方分権改革によって緩和・廃止され,教育委員会等の委員会の設置も義務ではなくなった。一方,都道府県の知事部局については,行政サービスの多様化に伴い増加傾向にある部局数を抑制するため,行政改革の観点から,具体的な部局名と数を法定する仕組みが第一次地方分権改革後も一貫して維持されている。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
前半部分は妥当です。後半部分ですが、地方公共団体において、議会による長の不信任議決があった場合、長は「10日以内」に、議会解散 or 自分が失職 です。「30 日以内」ではありません。そして、解散の場合、解散後の初議会で、改めて出席過半数賛成による不信任議決があると、首長失職です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
審議会は調査などのための合議制機関です。執行機関の附属機関という位置づけです。「長と並ぶ」機関とはいえません。執行機関に答申を行います。「条例案や予算を・・・直接提出」するわけではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
前半部分は妥当です。長と議会の立場や首長が対立することも多々あります。統一地方選挙ですが、首相の任期途中での辞職や死亡、議会の解散などの影響で、近年実施される数が減少傾向にあります。「県知事の選挙は全て、、、同じ4月に実施」ではありません。少なくとも「全ての県知事が同時ではないだろう」と考えたい記述です。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
地方自治法 100 条の調査権に関する記述です。

選択肢 5 ですが
教育委員会は、都道府県及び市町村等に置かれる合議制の執行機関です。地方自治法 180 条の 5 に規定されていて、設置義務があります。また、地方分権という観点から考えると「具体的部局名と数を法定する仕組み」は、弾力性に欠けおかしい、と判断したい記述です。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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