公務員試験 H28年 国家一般職(農学) No.25解説

 問 題     

植物の病害抵抗性に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.遺伝子対遺伝子説は,特定の病原体系統(レース)に対し,宿主植物の品種が示す特異的な抵抗性の遺伝的背景を説明するものである。ある非病原力遺伝子(AVR)を持つ病原体レースに対して,そのAVR 遺伝子に特異的な抵抗性遺伝子(R)を持つ品種が抵抗性を発現する。

2.感染前から植物が備えている静的抵抗性の要因としては,ケイ酸により硬化したイネの細胞壁やファイトアレキシンなどがある。感染後に誘導される動的抵抗性の要因としては,プロヒビチンや過敏感反応などがある。

3.特定の病原体レースに対し,少数の宿主遺伝子の効果で発揮する抵抗性を非宿主抵抗性といい,レースの相違に左右されにくく,多遺伝子支配の抵抗性を真性抵抗性という。また,ある病原体の宿主とはなり得ない,植物が示す絶対的な抵抗性を圃場抵抗性という。

4.病原体を認識した植物の細胞では,カルシウムイオン,サイクリックAMP,ヒスタミン,ジャスモン酸などのシグナル物質の量が変化する。その結果,カマレキシンやディフェンシンといったセカンドメッセンジャーが生成され,防御系を構成する。

5.ウイルスの感染後に過敏感反応が起きた植物では,シグナル物質グルタミン酸の含量が全身で増加し,その結果,感染組織から遠く離れた未感染組織でもウイルスの再感染に対する抵抗性を示すようになる。このウイルス感染に特異的な抵抗性を,誘導全身抵抗性(ISR)と呼ぶ。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は、妥当な記述です。

選択肢 2 ですが
ケイ酸で細胞壁が「硬化」するわけではないと考えられます。また、ファイトアレキシンは動的抵抗性の一例です。プロヒビチンは感染前から有している抗菌物質なので、静的抵抗性の一例です。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
「圃場抵抗性」とは、「抵抗性はそれほどないが、安定して効果が持続する抵抗性」のことです。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
カマレキシンやディフェンシンは「抗菌物質」です。セカンドメッセンジャーは、二次的に産生される「情報伝達物質」です。cAMP などが例としてあげられます。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
誘導全身抵抗性では、「ジャスモン酸」や「エチレン」が蓄積することが知られています。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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