公務員試験 H28年 国家一般職(化学) No.13解説

 問 題     

図Ⅰ及び図Ⅱは、A、B二成分混合溶液の温度と、その温度において平衡状態にある溶液と蒸気それぞれの組成を示したもの(温度-組成図)である。これらに関する記述㋐~㋓のうち妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

㋐ 図Ⅰにおいて、初期状態 a1 から加熱していくと、状態 a2 で沸騰し、最初の蒸気を取り出すと状態 a2‘ の組成となっている。

㋑ 図Ⅰでは、全ての組成の混合溶液で、溶液より平衡蒸気の方が成分 A に富んでいる。よって、蒸留を繰り返すことによりほぼ純粋な A が得られる。

㋒ 図Ⅱにおいて、混合溶液の沸点は組成 x1 で極小を示している。これは、A と B の分子間相互作用により、混合溶液が組成 x1 において最も安定化されたことによる。

㋓ 図Ⅱでは、AとBは組成 x1 で共沸混合物となる。したがって、蒸留を繰り返すことにより組成 x1 の混合物が得られる。

1.㋐、㋑、㋓
2.㋐、㋒
3.㋐、㋓
4.㋑、㋒
5.㋑、㋒、㋓

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

イメージをしやすくするために、図Ⅰについて「A,B ニ成分系」を具体的に、「水とメタノールニ成分系」として考えます。成分 A のモル分率が 0 の時の方が沸点が高い と読み取れるため、Aがメタノール、Bが水と設定します。

記述㋐は、正しい記述です。
初期状態 a1メタノール 15%,水 85% ぐらいの混合溶液です。温度が T1 です。(すでにメタノールのみの場合の沸点は超えているので、80 ℃ぐらいのイメージです。)温度を上げていって a2 に到達した時は「液体+気体 の二相状態」になり始めた という状態です。

ニ相状態の時、液体、及び気体の組成は、状態の点からまっすぐ左右に線を伸ばし曲線と交わる点を読むことでわかりますどちらが蒸気の組成か という話ですが「沸点が低いもの」の方が、蒸気には多く含まれるはずですa2’ は成分 A すなわち メタノールのモル分率が多くなっています。水とメタノールであれば、メタノールの方が沸点が低いので、a2’ の組成が蒸気の組成で矛盾しません。

記述㋑は、正しい記述です。
「溶液より、平衡蒸気の方が成分 A に富んでいる」とは、液体の所の適当な1点をとり温度を上げていき、二相の領域に入った時にいつも 「Aのモル分率が増える 右手側」に「蒸気との境目を示す曲線がある」 ということです。当たり前ではないか?と思うかもしれませんがⅡの x1 より右側においては成り立たないことを、ぜひ確認してみてください。

以上より、記述㋐、㋑が共に正しいため、正解は 1 です。

ちなみに、記述㋒ですが
混合溶液が「最も安定化」したのであれば沸点は大きくなるはずです。よって誤りです。

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