公務員試験 H28年 法務省専門職員 No.3解説

 問 題     

ヒューマンエラーに関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.ヒューマンエラーとは,認知活動の遂行上の誤りのことであり,やろうとすることの決定判断の誤りとしてのスリップと,行為開始後の遂行上の誤りとしてのミステイクとに分けられる。スリップには,自動化した行動ルーチンに陥ってしまうキャプチャエラー,外界の情報を自分の意図に合わせて読み違えてしまう記述エラーなど,様々なエラーがある。

2.多くの機能をもつ機器を使用する場合に,あるモードでは適切な行為を別のモードで実行してしまい,結果的にエラーとなることをモードエラーという。これはミステイクの一種とされ,例えば,テレビの入力設定がビデオになっているのに気付かず,テレビのリモコンを操作してもチャンネルが替わらない,といった場合である。

3.フロイト(Freud, S.)は,言い間違えを含む錯誤行為について,「錯誤行為の多くは,しくじりをしないようにと注意するときには起こりません。つまり,必要な注意力を他にそらしていないときには起こらないのです。」と述べ,不注意や注意の欠如による錯誤行為の説明に対して肯定的であった。

4.ノーマン(Norman, D.A.)は,スリップが生じるメカニズムについて,スキーマ理論の立場から説明した。それによると,熟練した行為は階層構造を成したスキーマから構成され,上位の親スキーマの活性化が起こると,下位の子スキーマが次々に駆動し,最終的に意図した行為が実行されるが,スリップは,この仕組みがうまく作動しない場合に発生すると考えられている。

5.リーズン(Reason, J.T.)によれば,行動は,①目標を決め,行動を計画するプランニング段階,②意図した目標と計画の保持をする貯蔵段階,③計画の実行段階,といった3 段階から成る。このうち,実行段階でのエラーには,最初の行動プランを忘れてしまうような場合が含まれ,それは一時的健忘と呼ばれる。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
「スリップ」は、ボタンの押し間違いのような「遂行上の誤り」です。「決定判断の誤り」は「ミステイク」です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
モードエラーとは「別の場面では正しいとされる行動をしてしまうスリップ」です。仕事じゃなく、客としてコンビニにいる時に自動ドアが開くと「いらっしゃいませ~」と言ってしまう、といった行動です。「スリップの一種」であり「ミステイクの一種」ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
フロイトは言い間違いを無意識における本心と考えました。「不注意や注意の欠如」ではありません。選択肢 3 は誤りと考えられます。

選択肢 4 は妥当です。
ノーマンのスキーマ理論です。行為を「スキーマ指定→活性化→実行」とモデル化しました。これを ATS モデルといいます。

選択肢 5 ですが
「最初の行動プランを忘れる」場合は「貯蔵段階」でのエラーと考えられます。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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