公務員試験 H28年 国家一般職(行政) No.41解説

 問 題     

我が国の財政制度に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.予算制度においては,移用及び流用という制度が認められている。移用とは,経費の性質が類似又は相互に関連している項と項との間の経費の融通であり,あらかじめ予算をもって国会の議決を経た場合に限り,財務大臣の承認を経て認められる。また,流用とは,同一項内の目と目との間の経費の融通であり,財務大臣の承認を経て認められる。

2.予算は,まず衆議院に提出され審議を受ける。参議院が衆議院と異なった議決をした場合には両院協議会を開くが,それでも意見が一致しないときは衆議院の議決が国会の議決となる。また,参議院が衆議院の可決した予算案を受け取った後 60 日以内に議決しない場合,衆議院は参議院が予算案を否決したものとみなし,衆議院の再可決を経ることにより予算を成立させることができる。

3.財政法第 5 条は,国債の日本銀行引受けによる発行を原則として禁止しており,これを国債の市中消化の原則という。同条ただし書においては,特別の事由がある場合には例外を認めており,具体的には,大災害等の非常事態発生時においては,国会の議決を経ることなく内閣の判断で,国債の日本銀行引受けによる発行ができるとされている。

4.地方交付税の法定率分は,所得税,法人税,消費税及び相続税の各税収入額に対して,それぞれ一定割合を乗じて得られる。また,地方交付税交付金のうち,普通交付税として交付される金額を算定する際に用いる「基準財政収入額」は,都道府県においては,各地方団体における標準的な地方税収入の全額から地方譲与税等の額を差し引くことで算出される。

5.特別会計は,国が特定の事業を行う場合,特定の資金を保有してそれを運用する場合,特定の歳入をもって特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合に限って,法律ではなく政令等により,これを設けることができる。平成 19 年度以降は,新たな特別会計は設けられておらず,平成 27 年度初めでは,特別会計の数は 17 となっている。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は妥当です。
移用及び流用についての記述です。項、及び、目の例としては、項:介護保険推進費、目:介護保険事業費補助金 といった具合です。

選択肢 2 ですが
一文目、二文目は妥当です。憲法 60 条第 1 項に基づき、衆議院が予算先議権を有します。そして、衆議院の優越があり、参議院が衆議院と異なる議決をした場合、両院協議会を開いても意見の一致を見ない場合、衆議院の議決が国会の議決となります。最後の一文ですが、予算案を受け取った後「30」日以内に議決しない場合、「衆議院の議決がそのまま国会の議決」となります。「60 日以内」ではありません。また、「衆議院の再可決」は不要です。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
財政法第 5 条によれば、「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない」とあります。「国会の議決を経ることなく」ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
地方交付税の法定率分は、所得税、法人税、消費税及び「酒税」の各税収入額に対して、それぞれ一定割合を乗じて得られます。「相続税」ではありません。また、基準財政収入額は「地方税収入額に、原則として 75/100 を掛けて地方譲与税等を加えて」算出します。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
平成 24 年度において、東日本大震災復興特別会計が新設されています。「平成 19 年度以降は、新たな特別会計は設けられていない」わけではありません。また、特別会計の数は減少しており、平成 27 年度初めは 14 です。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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