公務員試験 H28年 国家一般職(行政) No.16解説

 問 題     

行政行為に関する ア〜オ の記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし,争いのあるものは判例の見解による。

ア.行政行為は,たとえ違法であっても,当該行政行為が当然無効と認められるものを除いて,適法に取り消されない限り完全にその効力を有するものであり,裁判所も当該行政行為が有効であることを前提として判断しなければならない。

イ.行政行為は,一定期間経過すると行政行為の効力を裁判上争うことができないという不可争力が生じるから,特別の規定がない限り,一定期間経過後に,当該行政行為を行った行政庁が自らこれを取り消すことはできない。

ウ.行政行為が違法であることを理由として国家賠償の請求をする場合,あらかじめ当該行政行為につき取消し又は無効確認の判決を得なければならない。

エ.行政財産である土地について建物所有を目的とし期間の定めなくされた使用許可が当該行政財産本来の用途又は目的上の必要に基づき将来に向かって取り消されたときは,使用権者は,特別の事情のない限り,当該取消しによる土地使用権喪失についての補償を求めることができる。

オ.書面によって表示された行政行為は書面の作成によって成立し,当該行政行為が,行政機関の内部的意思決定と相違していても,正当の権限ある者によってなされたものである限り,当該書面に表示されたとおりの行政行為があったものと認められる。

1.ア,イ
2.ア,オ
3.イ,ウ
4.イ,エ
5.ウ,オ

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

行政行為について、まず小辞典の項目「行政行為」、見開き 2 ページに目を通すと、より理解が深まります。

記述 ア は妥当です。
行政行為の「公定力」に関する記述です。(最判 S30.12.26)。

記述 イ ですが
不可争力とは、一定期間を経過すると、私人側から行政行為の効力を争うことができなくなる効力のことです。行政上の法律関係早期安定という趣旨に基づきます。一定期間経過後も、行政庁の側からの職権取消しは、可能です。記述 イ は誤りです。

記述 ウ ですが
最判 S36.4.21 によれば、「行政処分が違法であることを理由として国家賠償請求をするにあたり、あらかじめ取消しまたは無効確認判決を得なければならないものではない」と述べられています。記述 ウ は誤りです。

記述 エ ですが
最判 S49.2.5 によれば、「使用許可により与えられた使用権が、期間の定めがない場合、当該行政財産本来の用途または目的上の必要を生じたときは、その時点において原則消滅すべきものであり、権利自体に制約が内在されている。ただし、特別な事情がある場合は、その範囲内での補償があり」えます。従って、特別の事情がないのであれば、補償を求めることができません。記述 エ は誤りです。

記述 オ は妥当です。
内部意思決定と相違する表示を有する書面により成された行政行為 についての記述です。

以上より、正解は 2 です。

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