公務員試験 H28年 国家一般職(行政) No.11解説

 問 題     

憲法第 14 条に関する教授の質問に対して,学生A〜Eのうち,妥当な発言をした学生のみを全て挙げているのはどれか。

教 授:今日は,法の下の平等を定めた憲法第14 条の文言の解釈について学習しましょう。同条第1 項は「すべて国民は,法の下に平等であつて,人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない」と規定していますが,同項にいう「法の下に平等」とはどのような意味ですか。

学生A:同項にいう「法の下に平等」とは,法を執行し適用する行政権・司法権が国民を差別してはならないという法適用の平等のみを意味するのではなく,法そのものの内容も平等の原則に従って定立されるべきという法内容の平等をも意味すると解されています。

学生B:また,同項にいう「法の下に平等」とは,各人の性別,能力,年齢など種々の事実的・実質的差異を前提として,法の与える特権の面でも法の課する義務の面でも,同一の事情と条件の下では均等に取り扱うことを意味すると解されています。したがって,恣意的な差別は許されませんが,法上取扱いに差異が設けられる事項と事実的・実質的差異との関係が社会通念から見て合理的である限り,その取扱上の違いは平等原則違反とはなりません。

教 授:では,同項にいう「信条」とはどのような意味ですか。

学生C:同項にいう「信条」が宗教上の信仰を意味することは明らかですが,それにとどまらず,広く思想上・政治上の主義,信念を含むかについては,ここにいう信条とは,根本的なものの考え方を意味し,単なる政治的意見や政党的所属関係を含まないとして,これを否定する見解が一般的です。

教 授:同項にいう「社会的身分」の意味についてはどうですか。

学生D:社会的身分の意味については,見解が分かれており,「出生によって決定され,自己の意思で変えられない社会的な地位」であるとする説や,「広く社会においてある程度継続的に占めている地位」であるとする説などがありますが,同項後段に列挙された事項を限定的なものと解する立場からは,後者の意味と解するのが整合的です。

教 授:同項後段に列挙された事項を,限定的なものと解するか,例示的なものと解するかについて,判例の見解はどうなっていますか。

学生E:判例は,同項後段に列挙された事項は例示的なものであるとし,法の下の平等の要請は,事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づくものでない限り,差別的な取扱いをすることを禁止する趣旨と解すべき,としています。

1.A,B,D
2.A,B,E
3.C,D,E
4.A,B,D,E
5.B,C,D,E

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

学生 A の発言は妥当です。
「法の下に平等」という部分は、法適用だけでなく、法内容の平等も意味すると解されます。

学生 B の発言は妥当です。
「法の下に平等」という部分は、合理的な取扱い上の違いまで認めないという趣旨ではないと解されます。

学生 C ですが
「信条」とは、「広く思想上の主義、世界観を含む」というのが一般的見解です。従って、「政治的意見」等も含まれます。学生 C の発言は妥当ではありません。

学生 D ですが
14条後段を「限定的と解する立場」からすれば、社会的身分についても狭く解するのが整合的です。すなわち、「限定的と解する立場」と整合的であるのは「出生によって決定され、自己の意思で変えられない社会的な地位」とする説です。学生 D の発言は誤りです。

学生 E の発言は妥当です。
尊属殺重罰規定判決の判例によれば、例示事項とされています。また、14条1項の趣旨について、合理的な根拠に基づかない限り、差別的取扱いを禁止する趣旨と判示しています。

以上より、正解は 2 です。

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