公務員試験 H27年 国家専門職(食品衛生監視員) No.4毒性学Ⅱ(1)解説

 問 題     

変異原性試験に関する、次の記述のA~Jに当てはまるものを語群から選び出しそれぞれの番号を記せ。なお同じものを複数回用いてもよい。

遺伝子の突然変異には、塩基の置換による塩基対置換型と、塩基の挿入や欠失によるA型があり、塩基対置換型のうち、プリン塩基同士あるいはピリミジン塩基同士で置換が起こるものをB プリン塩基とピリミジン塩基の間で置換が起こるものをC という。

DNA 損傷性を指標とする試験法の一つであるD は、細胞を溶解後に電気泳動を行うもので、DNA の損傷の程度が E いほど、DNA の移動距離が大きくなると考えられている。短時間で評価可能で検出感度は F い。
またG は正常細胞では、H 期でのみ DNA 合成が行われるのに対し、DNA が損傷されるとそれ以外の細胞周期でも不定期にDNA 合成が行われることを利用した試験法である。

これらの他に遺伝子突然変異誘発性を指標とする試験として細菌を用いたI 細胞を用いたJ などがある。

<語群>①塩基対挿入、②インテグレーション、③セパレーション、④トランジション、⑤トランスバージョン、⑥トランスミッション、⑦フレームシフト、⑧Ames試験、⑨PCR 試験、⑩TL 試験、⑪UDS 試験、⑫umu試験、⑬コメットアッセイ、⑭小核試験、⑮マウスリンフォーマ試験、⑯高、⑰低、⑱G、⑲M 、⑳S

 

 

 

 

 

 解 説     

突然変異を引き起こす性質が「変異原性」です。この変異原性を検出する試験が「変異原性試験」です。

遺伝子の突然変異には、塩基置換型と「フレームシフト型」があります。遺伝子の実体はDNAであり、塩基A,T,C,Gの文字列として解釈することができます。この文字列のうち一文字が、別の文字に化学物質によって置き換えられるのが、塩基対置換型です。一方、文字が完全に消されたり、挿入される、というのが「フレームシフト型」の変異です。遺伝子文字列は、3文字1セットで読み取られるのですが、その読み枠(フレーム)が移動(シフト)してしまうということです。

塩基対置換型については、プリン同士(A⇄G)、ピリミジン同士(T⇄C)の置換は”転位(トランジッション”、プリン⇄ピリミジン間の置換は”転換”(トランスバージョン)と呼ばれます。

DNA 損傷試験としては、簡便なコメットアッセイ試験(細胞溶解後、電気泳動、損傷があるほど泳動で引っ張られて、衛星の尾(コメット)のようなものが見られる)や、従来 S 期にしか行われないDNA合成ですが、DNA損傷修復時にも合成されるため、その際取り込まれる 3H 標識チミジンを測定する試験である「不定期DNA合成試験(UDS試験)」などがあげられます。

遺伝子レベルでの突然変異誘発性を指標とする試験としては、ネズミチフス菌を用いる 「Ames 試験」や、哺乳類培養細胞を用いる 「小核試験」があります。

以上より
A フレームシフト ⑦
B トランジション ④
C トランスバージョン ⑤
D コメットアッセイ ⑬
E 高 ⑯
F 高 ⑯
G UDS 試験 ⑪
H S ⑳
I Ames試験 ⑧
J 小核試験 ⑭ です。

コメント