公務員試験 H27年 法務省専門職員 No.11解説

 問 題     

次は、バウマイスター (Baumeister, R. F.) らによって行われた、将来の予測が自己制御にどのような影響をもたらすかを検討した実験であるが、この実験の結果を表すグラフ及びその解釈として最も妥当なのはどれか。

<実験手続>
⑴ 参加者に EPQ (外向性-内向性を測定するパーソナリティテスト) への回答を求め、その直後、検査結果について正確なフィードバックを与えた。

⑵ 全ての参加者を以下の3条件のいずれかに無作為に振り分け、それぞれの条件ごとに EPQ の結果からは次のようなことが予測されるとして① ② ③の各情報を与えた。

①将来の孤立条件:人生を通じて良好で安定した対人関係を維持することが難しく、結婚生活にも失敗しがちで、友人関係も長続きしにくく、晩年は一人で過ごすことになる可能性が高いでしょう。

②将来の所属条件:人生を通じて実りある対人関係に恵まれ、安定的な結婚生活を送り、長く続く友人関係を得ることもできる可能性が高いでしょう。

③将来の不運条件:将来事故に遭いやすく、腕や脚を骨折したり交通事故でけがをしたりする可能性が高いでしょう。

※ ① 及び ③ の参加者は、② の参加者と比べ、⑵ のフィードバックを受けて否定的な気分になったと報告した。① の参加者と ③ の参加者の間には気分の程度に差はなかった。

⑶ 各参加者の前に、砂糖と酢と水が混ぜ合わされた飲み物を入れた紙コップが20個置かれ、次のように教示された。「この飲み物はほとんどの人にとっておいしいものではありません。しかし害があるものではありません。これは体に良い飲み物です。1カップ飲むごとに50セントを差し上げます。どれくらい飲むかはあなた次第です。」

※飲み物の味について、「1:まずくない」から「10:非常にまずい」までの 10 件法で回答を求
めたところ、平均は 6.86 であり 67 % の参加者が7以上と評定した。


外向性の程度にかかわらず、将来の孤立を予測された人は自己制御が弱まり、飲み物を飲む量が少なかった。これは、単に否定的な予測を受けたことによる不快な気分によるものではないと考えられる。

外向性の程度にかかわらず、将来の孤立を予測された人は自己制御が弱まり、飲み物を飲む量が少なかった。ただし、将来の不快な結果を自分の努力次第で統制できるという予測があると、自己制御の弱化が緩和されると考えられる。

外向性の程度にかかわらず、将来の孤立を予測された人は自己制御が弱まり、飲み物を飲む量が少なかった。これは、単に否定的な予測を受けて不快な気分になったことによるものではないと考えられる。

外向性の程度にかかわらず、将来の孤立を予測された人は自己制御が強まり、飲み物を飲む量が多かった。これは、単に否定的な予測を受けて不快な気分になったことによるものではないと考えられる。

外向性の程度にかかわらず、将来の孤立を予測された人は自己制御が強まり、飲み物を飲む量が多
かった。これは、否定的な予測を受けたことによる不快な気分を発散しようとした結果であると考えられる。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

知識不要で落としたくない問題といえます。

実験の流れは
(1) で、外向性ー内向性について 「あなたは これぐらい 外向的/内向的」と教えてもらう → (2) で、将来予測 を教えてもらう。①、③ は不快な結果、② はうれしい結果 → (3) で、まずい飲み物だが、体に良いと言われ、しかも報酬ももらえる状況で何杯まで飲むかを見る、というものです。

まず、選択肢 1 ~ 5 の冒頭は全て同じ記述「外向性の程度にかかわらず」なので、(1) は気にしなくてOKです。そして、選択肢 1 ~ 5 の次の文に注目すると「将来の『孤立』を予測された人は、自己制御が 弱まり or 強まり、飲み物を飲む量が 少なかった or 多かった」とあります。将来孤立と予測されれば「どうでもいいや」と考えて「自己制御」は『弱まる』と考えるのが妥当です。正解は 1 ~ 3 です。

3つの選択肢 を更に検討します。

選択肢 1 は妥当です。
「単に否定的予測を受け、不快だから飲む量が減った」のであれば、将来の不運を予測された場合も飲み物の量が減ると考えられます。従って、単に否定的予測を受け、不快だったからではないと解釈できます。

選択肢 2 ですが
グラフは「将来の不運」を予測された人が一番多く飲み物を飲んでいます。自己制御の弱化が緩和する とは、この実験において飲み物の量が増えるということです。ところが、不運は「努力次第で統制できる」とは考えられません。グラフの解釈として誤っています。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
将来の孤立予測と不運予測の飲み物の量が同じなので、単に否定的予測を受け、不快だからという解釈が妥当と考えられます。選択肢 3 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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