公務員試験 H26年 法務省専門職員 No.9解説

 問 題     

乳幼児期の発達研究に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1. ハーロー (Harlow, H. F.) は、アカゲザルの研究を通じて、人間においても、乳児と母親との
接触による満足が愛情の形成につながると指摘した。そして、愛情を五つの段階に分類し、一つ
の段階でつまずいたとしても、母親との接触があれば最後の段階に進むとした。また、乳児の発
達の特徴として、3か月微笑と8か月不安を明らかにした。

2. スピッツ (Spitz, R. A.) は、精神分析のリビドー対象の形成の考えと、動物行動学の生得的解
発機構の考えに基づいて、乳児の対人的対象関係と情動反応の発達を研究し、精神分析的発達心
理学の方法論を確立した。彼は、さらにこの方法論を自己感の発達と結び付け、乳児の情動に波
長を合わせ共感的に応答する母親の機能を自己対象機能と概念化した。

3. ゲゼル (Gesell, A. L.) は、双生児統制法による実験研究を行い、発達における成熟優位説を
説き、その中で環境要因の重要性を主張した。また、彼は、新生児の機能障害を早期発見するた
めのスクリーニング用新生児行動検査を、新生児の行動の個人差に関する発達心理学的な特徴と
結び付けて、新生児行動評価尺度を作成した。

4. バウアー (Bower, T. G. R.) は、乳幼児の遊びの発達を研究し、一人遊びと社会的遊びの二つ
に分類した。一人遊びは、まず乳児期に口や手足などの自己の身体の器官をはたらかせる身体遊
びに始まり、それが自分で演技して遊ぶ役割演技遊びに発達し、さらに外界の様々なものを操作
し支配する対象遊びへと発達するとされる。

5. トマス (Thomas, A.) とチェス (Chess, S.) は、子どもの気質について、乳児期から青年期まで
にわたり母親を対象とした縦断的調査を行い、気質の個人差を明らかにして、それが発達ととも
にどのように変化したり持続したりするかについて検討を行った。その結果から、子どもが持っ
ている気質と環境との好ましい適合が健康的な発達のになると結論付けた。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
ハーローのアカゲザルの研究は「愛着」についてです。ボウルビィが愛着は「4つ」の段階を経て発達すると考えました。すなわち、1:誰にでも愛着→2:父母に愛着、他に人見知り→3:分離不安→4:愛着対象がそばにいなくても安心 という4段階です。また、3ヶ月微笑、8ヶ月不安を提唱したのはスピッツです。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
記述はボゥルビィについてです。スピッツは3ヶ月微笑、8ヶ月不安を提唱しました。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
ゲゼルは一卵性双生児の階段のぼりの実験から、訓練しなくても身体的成熟が進めば、訓練を行った場合と同等の技能を示すことを明らかにしました。そして、学習成立のための内的な準備状態としての「レディネス」という概念を提唱しました。成熟優位論といいます。「環境要因の重要性」ではありません。環境要因の重要性を提唱したのは「ワトソン」です。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
一人遊びと社会的遊びに分類したのはシュテルンです。バウアーではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
トマスとチェスの気質についての記述です。

以上より、正解は 5 です。

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