公務員試験 H26年 法務省専門職員 No.7解説

 問 題     

高齢者の身体的精神的機能又は心理に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1. 高齢者においては、各種感覚機能が低下し、視覚の面では、暗順応が悪くなったり水晶体の厚みの調節力の低下から物体を見る際に焦点を合わせにくくなったりする。聴覚の面では、特に高周波数の音が聞こえにくくなる。ただし、温度感覚に関しては低下しないか逆に敏感になる。

2. キャッテル(Cattell, R. B.)は、知能構造は流動性知能と結晶性知能との二つの因子によって説明できるとしたが、高齢者にあっては、この二つのうち記憶の再生能力と関係の深い結晶性知能の方が流動性知能に比べて大きく低下する。

3. 高齢者に多い認知症は、記憶障害から発症することが多く、その特徴として、エピソード記憶は意味記憶ほどには障害されず、新しいことを覚える記銘力の低下が目立つことが挙げられる。進行すると場所や時間の見当識が失われ、日常生活に支障を来すようになる。

4. 認知症高齢者をスクリーニングするテストとして我が国で開発された改訂長谷川式認知症スケール(HDS-R)は、9項目の質問により構成されており、被検査者に大きな負担を掛けることなく実施できるという特長がある。

5. ライチャード (Reichard, S.) は、高齢者のパーソナリティを①円熟型、②安楽椅子型、③装甲型、④憤慨型、⑤自責型の五つに分け、日常生活に対して建設的で満足を感じている円熟型を適応的な型とし、それ以外を不適応型とした。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
視覚、聴覚については妥当な記述です。聴覚についてはモスキート音の実験を知っている人も多いのではないでしょうか。「高周波」が聞き取りづらくなります。また、温冷熱の感覚も一般的に「鈍く」なります。「低下しないか逆に敏感」という記述は妥当ではありません。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
流動性知能は、新たな状況への適応に必要な能力です。計算・図形・推理などで測定します。結晶性知能は、経験や学習で形成される高度な判断、習慣に関する能力です。高齢者においてより低下するのは「流動性知能」です。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
エピソード記憶(いつ、どこで、なにした という記憶)、意味記憶(言葉の意味 など) 共に障害されやすいとされています。比較的障害されにくいのは「手続き記憶(体が覚えている、自転車の乗り方 など)」です。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当な記述です。

選択肢 5 ですが
ライチャードの 5 分類では、4,5 すなわち「憤慨型」「自責型」が不適応型とされます。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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