公務員試験 H26年 法務省専門職員 No.6解説

 問 題     

知能の測定と診断に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1. シュテルン (Stern, W.) はフランスの社会教育省の依頼を受けシモン (Simon, T.) と協力し優秀児をスクリーニングすることを目的として知能検査を開発し精神年齢という尺度を導入して知能を客観的に測定した。その後彼らの目的は知的障害を有する学齢児をスクリーニングすることへと移行した。

2. ターマン (Terman, L. M.) はビネー式知能検査について大規模な標準化を行い改訂版としてスタンフォード=ビネー知能検査を作成した。この検査では知能指数の概念が導入・実用化され知能指数が次の公式によって表される。

3. 知能を分析的・領域的に測定し個人の知能構造の特徴をその構成因子を中心に診断的に明らかにする検査を診断的検査と呼ぶ。結果は下位検査別知能因子別などのプロフィールで表示されるほかそれらの総合としての一般的知能水準も測定できる。例としてウェクスラー式知能検査が挙げられ同検査では偏差知能指数が次の公式によって表される。

4. オーチス (Otis, A. S.) やヤーキース (Yerkes, R. M.) らは、多数の被測定者から知的障害者などの特定の障害をもった人を同時にスクリーニングするための、短時間で実施可能な集団式の知能検査を考案した。この検査には α 式と β 式があり、特定の文化環境に育った人が有利又は不利にならないよう両方の検査を受けることとなっている。

5. 知能の測定に際しては妥当性と信頼性の問題に注意する必要がある。前者は同一の項目・尺度を同一人に比較的短い期間内に再検査するといった方法で、後者は将来の知的行動の程度を予測し得るものであるかどうか、あるいは経験者・専門家たちによる知的行動の観察評定と一致するかどうかを調査するといった方法で確認することができる。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
フランス政府の依頼を受け、世界初の知能検査を作ったのは「ビネー」と「シモン」です。シュテルンは知能指数(IQ)という指標(計算式)を考案した人です。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
記述は妥当です。知能指数の計算式を「考案」したのはシュテルンで、知能検査に導入・実用化されるのは、このターマンによるものです。しかし、式の右辺における「生活年齢」と「精神年齢」の分母・分子が逆です。この式では、精神年齢が高いほど、知能指数が「低く」なってしまいます。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当な記述です。
「ウェクスラーの偏差知能指数(DIQ)」をこの機会におさえておくとよいと思います。

選択肢 4 ですが
オーチスやヤーキースは、兵員選抜のため集団知能検査を考案しました。α 式は、英語を母国語とする兵士の知能水準を見る「言語式」として開発されました。移民、外国人のための β 式が「非言語式」です。「両方の検査を受けることとなっている」わけではありませんでした。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
妥当性は、測定したい内容を的確に測定しているかどうかです。内容的妥当性、基準関連妥当性、構成概念妥当性に分類されます。信頼性とは、測定内容が安定、一貫していることです。再検査法(同じ人に同じ検査)、平行テスト法(同じ人に、内容・難易度・質問項目数が同じ検査を2種類実施)などで確認します。記述は「前者」と「後者」が逆です。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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