公務員試験 H26年 国家一般職(行政) No.3解説

 問 題     

政治意識と政治文化に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

1. G.アーモンドとS.ヴァーバは、米国など5か国の比較調査を行い、それぞれの国民が政治システム、入力機構、出力機構、自己という四つの対象に対して抱く態度の分析から、各国の政治文化を「臣民型政治文化」、「社会主義型政治文化」、「参加型政治文化」という三つのタイプに分類した。

2. ミシガン学派が提示した概念である政治的有効性感覚には、内的有効性感覚と外的有効性感覚があるが、前者は自分の参加行動が、帰属する組織・集団内において及ぼす影響力に関する認知,後者はこうした参加行動が、帰属する組織・集団の外部に対して及ぼす影響力に関する認知を指すものである。

3. R.イングルハートは、1980年代以降の情報通信産業の発達を中心とした社会・経済的な構造の変化を背景に、豊かな先進国の人々の間では身体的な安全や物質的な豊かさから自由や自己実現へといった価値観の変化が生じたとし、後者のような「脱物質主義的価値観」を持つ人々の政治行動が「ニューポリティクス」と呼ばれる政治のスタイルをもたらしたと論じた。

4. E.フロムは、精神分析的なアプローチに基づく「社会的性格」概念を用いて第二次世界大戦前のドイツにおいて全体主義的体制が生まれた背景を考察し、当時の下層中産階級に典型的に見られたサド・マゾヒズム的な衝動を持つ「権威主義的性格」が、こうした体制に対する支持の基底にあると論じた。

5. E.ノエル=ノイマンは、マスメディアがある争点に関する人々の意見分布を報道することにより、自分を少数派だと感じる人々が意見の表明を抑制する傾向が生まれ、その結果ますます多数派の意見のみが強く報道されるようになるという「バンドワゴン効果」の存在を実証的に明らかにした。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
アーモンドとヴァーバによる政治文化の分類は「未分化型政治文化」、「臣民型政治文化」、「参加型政治文化」の3つです。「社会主義型」という分類はありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
内的有効性感覚とは、有権者自身が政治や経済の動きを理解できるといった「自己の能力」に関する感覚のことです。外的有効性感覚とは、政治家、政党などが有権者の気持ちに応えてくれているという感覚のことです。「帰属する組織集団内、外に対して及ぼす影響力に関する認知」ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
イングルハートは、心理学者マズローの欲求段階説をふまえ、脱工業化社会が 1960 年代に出現し、豊かな環境下育った世代が、それ以前と異なる価値観(脱物質主義的価値観)を持つと仮説設定しました。そして、アメリカや EC 諸国を対象に国際比較世論調査を行い、実証を試みました。

ちなみに、ダルトンによれば、脱物質主義的価値観も当たり前となって、「美しい自然」、「やりがいある仕事」などを重視する、いわば超脱物質主義的価値観を有する若い世代が出てきており、新しい価値観に基づく政治行動をニューポリティクスと呼びました。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
フロムの社会的性格に関する記述です。

選択肢 5 ですが
記述は E.ノエル = ノイマンが提唱した「沈黙の螺旋」現象です。バンドワゴン効果とは、いわゆる「勝ち馬にのる」という現象です。すなわち、事前に優勢とされた候補者に、有権者が投票しがちになる現象です。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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