公務員試験 H26年 国家一般職(行政) No.4解説

 問 題     

政党と選挙に関する次の記述のうち妥当なのはどれか。

1. W.ライカーとP.オーデシュックは、合理的選択理論の立場から、選挙において競争している二つの政党がそれぞれもたらすと期待される効用の差が十分に大きく、なおかつ投票に参加するためのコストが一定以下であれば、有権者が投票に参加するのは常に合理的であると論じた。

2. 平成25年の参議院議員選挙から、我が国においてもインターネットを用いた選挙運動が認められることとなり、候補者は電子メールを用いて有権者への訴えを制限なく行うことができるようになったが、有権者が電子メールによって特定の候補者を応援することは禁じられたままとなっている。

3. S.リードは、日本の中選挙区制の下で、各選挙区で勝つ見込みのある候補者の数が「定数+1」に収斂(しゅうれん)していったことを実証的に示し、小選挙区制に関するいわゆる「デュヴェルジェの法則」は,このルールを選挙区の定数が1の場合に当てはめたものであると論じた。

4. G.サルトーリは、政党の数に注目して政党システムを分類し、一党優位制、二党制、穏健な多党制、分極的多党制などの類型化を行った。こうした類型化により、各政党のイデオロギーや,政党間のイデオロギー的な距離を捨象した形で各国の政党システムの比較が可能になった。

5. R.カッツとP.メアは、今日多くの民主主義国において連立政権が定常化していることの背景として、政策的な近接性によって他の政党と連合し、その政策の実現を通じて存続を図ろうとする政党の増加を挙げ、こうした政党を市場経済との類似性からカルテル政党と呼んだ。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
経済学的な効用計算を、選挙の投票参加に適用したのが、数理政治学者ライカーとオーデシュックです。報酬 R = PB ー C + D という方程式を考えました。R が投票により有権者が受け取る見返りです。 B が候補者間の期待効用差、P は自分の投票の主観的価値、C が投票へのコスト、D が市民としての義務感です。問題文は B が十分大きく、C が十分小さい場合ということですが、極端な場合として、P = 0、D = 0 (自分が投票しようがしまいが結果は全く変わらないと考えるし、市民としての義務感0の人)を考えれば R < 0 となるので「常に合理的」は言い過ぎです。選択肢 1 は誤りと考えられます。

選択肢 2 ですが
H25 年参議院議員選挙から、インターネットを用いた選挙運動が認められたという部分は妥当です。「インターネットを用いた」という部分は、電子メールか、電子メールでないウェブサイト等か、で大きく2分されます。電子メールを利用する方法については「候補者・政党」しか使えません。さらに、送信先について「事前の同意があるメールアドレス」や、「メルマガをもともと受信しているメールアドレス」など、制限があります。「制限なく行うことができる」わけではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
デュヴェルジェの法則とは、小選挙区制の下では二党制になり、比例代表制の下では多党制になるという法則です。リードにより拡大された理論が「M+1」ルールです。M 人選出選挙区 の有力候補者数が M+1 に収束するというルールです。

選択肢 4 ですが
サルトーリは、政党システムを「一党制、二党制、多党制」の3つにまず大別しました。「一党優位制、二党制、、、、」と分けたのではありません。そして、多党制をさらに、一党優位政党制とそれ以外に分類し、さらに細かく多党制を「穏健な多党制、分極された多党制、原子化された多党制」と3分類しています。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
「カルテル」とは、企業の独占形態の一つです。同種の生産にしたがう企業家が、企業の独立性を保ちながら連合し、自由競争をさけ、市場を独占、価格維持して利益の増進をはかることです。競争がなくなり、非効率な企業が温存されるため、厳しい規制対象となります。同様に、社会基盤を失った政党が、ただ選挙市場で既得権をもった独占者として生き延びているという現状が「カルテル政党」と呼ばれる状態です。「政治的な近接性により・・・連合し・・・政策の実現を図ろうと」しているわけではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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