公務員試験 H25年 国家専門職(食品衛生監視員) No.4毒性学Ⅰ解説

 問 題     

Ⅰ 有機リン系農薬中毒及びその対処法に関する次の文章の下線部 Ⓐ 及び Ⓑ の構造として適切なものを構造式群の中から、また㋐〜㋖に当てはまる語句を語群から選び出しそれぞれの番号を記せ。

「有機塩素系農薬である DDT の代替剤として開発された有機リン系化合物は、当初 Ⓑパラチオン のように全ての動物種に対して強い毒性を示していたが、その後標的種の選択性に優れた低毒性化合物が開発され、農薬等として利用されている。

有機リン系農薬の誤飲等により現れる急性中毒症状としては、㋐ が起こることにより目の前が ㋑ なる症状が認められるほか、頻脈、血圧亢進、ふるえなどが知られている。これは有機リン系農薬が ㋒ の活性を阻害し ㋓ が神経終末に蓄積することに起因し、ムスカリン様作用とニコチン様作用が現れるためである。したがって有機リン系農薬は典型的な ㋔ 毒性を示す化合物群であるといえる。

有機リン系農薬中毒の治療薬として、㋓ の蓄積によるムスカリン様作用の減弱化を目的として ㋕ が使用されるほか発症したニコチン様症状等の寛解を目的として ㋖ が使用されている。」

<語群>①アセチルコリン, ②アドレナリン,③アセチルコリンエステラーゼ,④アルカリフォスファターゼ、⑤アドレナリン受容体, ⑥血液, ⑦神経,⑧縮瞳, ⑨散瞳, ⑩明るく, ⑪暗く、⑫アトロピン, ⑬ジメルカプロール、⑭PAM(2-pyridine aldoxime methiodide)

 

 

 

 

 

 解 説     

構造式群ですが、① はパラチオンです。② はカルバリルです。③ はDDT(dichlorodiphenyltrichloroethane) です。従って、Aが③で、Bが①です。

有機リン系の急性中毒としては、縮瞳により眼の前が暗くなる症状が認められます。これはもし知らなくてもまず、「抗コリン」といえば散瞳を連想すると思います。ベラドンナアルカロイドがもともと、おめめぱっちりに用いられたことなどを聞いたことがあるかもしれません。

そして、有機リン系の作用機序といえば「コリンエステラーゼ阻害」です。コリンエステラーゼとはアセチルコリンを分解する酵素です。これが阻害されれば多量のアセチルコリンが蓄積し過剰な神経活動により末梢に様々な症状が出る、という流れです。解毒として、抗コリン薬、すなわちムスカリン受容体遮断薬であるアトロピンやPAM が用いられます。

以上より
㋐ 縮瞳 ⑧
㋑ 暗く ⑪
㋒ アセチルコリンエステラーゼ ③
㋓ アセチルコリン ①
㋔ 神経 ⑦
㋕ アトロピン ⑫
㋖ PAM ⑭ です。

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