公務員試験 2020年 国家一般職(行政) No.52解説

 問 題     

国際社会の法規範に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.ハーグ陸戦条約の成立によって国際社会に導入された戦争違法化の流れは,1928 年のワシントン海軍軍縮条約によって更に進展し,1945 年の国際連合憲章第2 条第4 項で「武力行使」の禁止という形で確立された。国連憲章は,加盟国に対する武力攻撃が発生した場合の対抗措置として,自衛権と集団安全保障を認めている。

2.国際連盟によって国際法でも個人の権利を保障する動きが始まり,一般的に自由権規約といわれる「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約」や,一般的に社会権規約といわれる「市民的及び政治的権利に関する国際規約」の成立は,国際人権法を進展させた。今日では,国連や地域機構に多くの人権保障機関が設置されている。

3.国際海洋法は,公海上にあっても人間を保護するための規範を定めた国際法であり,ジュネーブ四条約やジュネーブ諸条約追加議定書などから構成される。国際海洋法に違反した者を裁く国際機関として国際刑事裁判所が2002 年に設置された。

4.核・生物・化学兵器は大量破壊兵器(WMD)といわれ,核兵器は核兵器不拡散条約(NPT)によって,化学兵器は化学兵器禁止条約(CWC)によって,開発が制限されている。NPT では,1967 年初めまでに核兵器を製造しかつ爆発させた国を核兵器国とし,これらの国には核兵器の保有が認められている。

5.「国際の平和及び安全の維持に関する主要な責任」を持つ国連安全保障理事会は,国際の平和と安全への脅威を認定し,加盟国に対応を勧告することができる。1991 年の湾岸戦争は安保理決議の授権がなかったが,2003 年のイラク戦争には軍事行動を裏付ける明示的な安保理決議があった。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
1928 年、戦争違法化の流れを進展させた条約といえば、パリで調印された不戦条約(ブリアン・ケロッグ条約)です。ワシントン海軍軍縮条約は、主力艦保有比率が定められました。後半部分の国連憲章についての記述は妥当です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
国際法において個人の権利を保障する動きが始まるのは、第二次世界大戦後、「国際連合」によってです。「国際連盟」によってではありません。また、「自由権」といえば、代表的な権利の1つが、参政権などの政治的自由に関する権利です。従って、「自由権規約」と「社会権規約」が逆と考えられます。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
国際刑事裁判所(ICC) は、ジェノサイド罪などの特定の犯罪を扱います。(H30no53)。「国際海洋法に違反した者を裁く」わけではありません。また、ジュネーブ四条約等は、戦争犠牲者の保護強化のための、いわゆる赤十字諸条約を統一し、文民の保護に関する条約を加えたものです。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
大量破壊兵器に関する記述です。

選択肢 5 ですが
前半部分は妥当です。国連安全保障理事会は、脅威認定、対応勧告ができます。後半部分ですが、湾岸戦争においては、授権がありました。イラク戦争については、明示的決議がありませんでした。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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